第30話 夏祭り2

翌日。夏期講習当日。

塾に到着すれば友達はもう来ていた。

花音(かのん)ちゃんに麻琴(まこと)ちゃん。

二人とも高二で初めて同じクラスになって話すようになった。


「楽しみだねぇ。お泊り」

花音ちゃんがそんなふうに言っていた。

「花音のお母さんの料理すごく美味しいからね」

そう言ったのが真琴ちゃん。

麻琴ちゃんは花音ちゃんと同じ小学校と中学校の出身でしょっちゅう泊まりに行く仲らしい。

呼び捨てで呼び合う仲の2人が少し羨ましく思う。


今日は塾から歩いてすぐのところにある花音ちゃんの家に3人で泊まることになっている。私も楽しみだった。



◇◇



午前と午後。一通りの授業を受け終えてから花音ちゃんの家に向かう。


「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

と花音ちゃんのお母さんは出迎えてくれた。

事前に聞いていた通り優しそうで料理の上手な人だった。


夜ご飯を食べ終わってから花音ちゃんの部屋に移動して、3人でテーブルを囲んだ。

女の子らしい部屋の真ん中に、高さが膝くらいの大きめのテーブルが置いてある。

3人で囲めば、いかにも勉強会って感じ。

とりあえず塾のテキストをみんなで開いたけど、今日の本当の目的はそれじゃなかった。


「そろそろだからベランダ行こうよ」

と花音ちゃんが言って私たちはそのまま部屋から繋がっているベランダに出た。


「飛鳥はこのお祭り見たことある?」

麻琴ちゃんは私に聞いた。

「ううん、名前は知ってたけど初めて! 花火見るのもすごく久しぶり。部屋から花火見れるなんて花音ちゃん良いところ住んでるね!」


「でしょ! 花音ん家最高なんだって! せっかくだから飛鳥にも見せようと思って」

「ありがとう。なんか私、邪魔してないかなとも思ったんだけど、すごく楽しみ!」


花音ちゃんはフワフワしてて話しやすくて高二のクラスになって初めてできた友達。

麻琴ちゃんは明るくてフレンドリーで、始めは花音ちゃん繋がりで話したけどすぐに仲良くなれた。


「そんなことないよ〜。麻琴は去年も来てるし。ここからの景色、1年に1回の特権だからみんなに教えたいだもん」

花音ちゃん、良い子だなって心の中で感謝する。話しながら花火があがるのを待った。



◇◇



お泊まり会二日目。

今日は塾のあとみんなでお祭りに直接出かけることになっている。

お祭りは二日連続で行われる。

ほんとは昨日も行きたかったけれど、塾の授業はけっこう難しいし課題もある。一応勉強会っていう名目で集まっているし、お祭りには二日目だけ出かけることにした。


塾が終わって、まずは花音ちゃんの家に一回帰って

それからテキストとか荷物を置いて、ここから歩いてすぐの神社に行く予定だった。

ちょっと早いけど屋台とかゆっくり見てまわったりして、その後に三人で花火を見ようっていう話になっていた。


屋台とか、お祭りの雰囲気とか、昨日より近くで見れる花火とか考えただけで期待で胸がいっぱいになる。

そんなに友達が多いほうじゃないし、お泊まり会とかみんなでお祭りとか高校に入ってからは初めてだったから

慣れないことで二人に迷惑かけないようにしないとっていうのはもちろんあったけれど、

それ以上にとにかく楽しもうと思っていた。

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