第7話 家に帰ったら6
アイドルオタクってなんて悲しい生き物なのかなって思う時がある。
今、このタイミングですら
リリアのファンの人、略してリリアの人と言われたことがちょっとだけ嬉しいだなんて。
「あ、あはは……。そうですね……」
とは言ったものの、そんなにテンションが上がるわけでもなく。
なんとか自然に会話を繋げるしかなかった。
「私のこと、分かる?」
蛍ちゃんはそう言った。
「わ、分かる! 分かるに決まってるじゃないですかぁ……」
私の推しメンのリリアちゃんと同じグループのシューティングスター、青色担当の蛍ちゃんだ。
他のことは知らないけど。
「すごい、偶然。びっくりした」
「……そうですね。あはは……」
「最初は違うのかなとも思ったんだけど。いつもライブ来てるし」
蛍ちゃんの言う通り。たしかに私はいつもいるかもしれない。
毎週のようにライブに来ているファンって知り合いじゃなくても気付いたら顔を覚えちゃってたりするし。
「あはは、はは……。だいたい、居ますね」
「ねぇ。なんで敬語なの?」
「…………」
「…………」
そうやって言われて、何でか分からないけどあたふたして敬語になっていたことに気づいた。
……気まずい空気が流れている気がする。
蛍ちゃんと向き合って
可愛いなぁ、良い子そうだなぁってずっと考えていた。
私みたいな普通の高校生がいきなりお姉ちゃんなんて言われて、この子は納得できるのかなって心配になる。
蛍ちゃんは少し不思議そうな、でも真っ直ぐな目でこちらをじっと見ていた。
別にやましいことなんてないんだから。私も堂々と答えればいいのに。
「ま、まあ……。とりあえず、下で待ってるね」
なんて言って、急いで一階への階段を降りた。
何がまあで、何がとりあえずなんだろう。
かっこいい悪い言い方をしてしまったなと思った。
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