第8話 家に帰ったら7
レトルトのシチューを温めて、冷蔵庫からパックになっているサラダを取り出す。
事前に分かっていればもっと豪勢にできたけれど仕方ない。
お皿に盛り付けて、テーブルに料理を並べ始めた頃
「あの」
蛍ちゃんがリビングの入り口にに立っていた。
蛍ちゃんはまだ制服のままだった。てっきり部屋着とかに着替えてくるかなとも思ったけど。
「適当に座っててね。お水かお茶でよければ冷蔵庫にあるの好きに飲んでいいから」
テーブルにデザートの買い置きのプリンを置きながら、私は蛍ちゃんに笑いかけた。
「ありがとう。ごめん、やってもらって」
「ぜんぜん! 気にしないで。急だったから何もないけど」
少しして蛍ちゃんを見れば少し気まずそうにペットボトのお水を飲んでいた。
「あ、ごめん。コップも出すね」
「ありがとう。これでもいいけど」
「一人が多いとそういうのは気にならなくなるよねぇ」
私は二人ぶんのコップを運ぶと、そう笑いながら席についた。
「いただきます」
「……いただきます」
味はレトルトだから大丈夫なはず、そう思いつつもちらりと蛍ちゃんを見た。
美味しそうに、かは分からないけれどそれなりのスピードで食べてくれていて安心した。
「味、大丈夫かな? 好きなものとか教えてね。今度はそれにする」
「おいしい。ありがとう。今度……、そのうち私もやるから」
蛍ちゃんは、今度をそのうちに言い換えていたので料理はあまり得意じゃないのかなって勝手に想像して少し和む。
素直な子なのかなと思った。
「本当に気にしないで。蛍ちゃんもご飯は一人が多かった?」
「うん。お母さん、あんまり家にいないから」
「うちも同じ」
「でも、私もシューティングスターに入ってからは、レッスンとかであんまり家にいないから」
「そっか」
「帰りに何か買って帰ったりとか、あとはメンバーと食べに行ったりとかが多いかな。そのかわりに門限とかなかったから」
そうやって、さっきよりも少しずつ蛍ちゃんはたくさん話してくれるようになった気がした。
一人でご飯が多かったり、門限とかなくて家が自由な感じだったり。
そういうところは似てるのかなぁて思った。
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