3-②

「見事に世間の目はごまかせているようですが…残念ながら私にはお見通しですよ。正体がばれないように、その黒いパーカーをきているんですよね?今からお仕事ですか?」


「ははは、なんのことやら。」

 そう落ち着いた声色で言った彼ではあるが、少し身体が強張り、緊張した様子が見て取れた。


 何度か問答を繰り返すものの、クロネコさんであることを頑なに認めない彼に、私は自分がファンであることをアピールすればよいのでは?と考えた。


 だが、どうすれば彼がクロネコさんであるということを周囲にばらさずに、ファンであることをアピールできるのか?


 何か良い方法はないものか…暫し考えた結果、昨日の依頼人との会話を思い出す。

 そうだ!あの決めゼリフがあった!

 あなたのハートを撃ち抜くぞ!だ!

 だが、こんな衆目を集めている場所であんな恥ずかしいセリフを言えるだろうか…

 私は葛藤した。


 "だが認めてもらうにはこれしかない!"

 そう確信した私は、手を拳銃の形にかえ、彼に突きつけながら、静かな声でこう言った。

「これでわかってもらえますよね?」

 彼はあまりの驚きで声がでなくなった様子だった。


 ここまでくれば認めるのも時間の問題だと感じた私は、最後に決定的な証拠を突きつけてやろうとクロネコさんの肩を叩いて、こう言い放った。


「残念ながら、どう言い繕ってもお見通しですよ。先ほどからずっと見えているんですよね…あなたの黒猫が!」


 すると、彼は「しまった」という顔をした後に、わずかに目を伏せた。だが、ついに観念したように肩をすくめると、何事かを小声でつぶやいた。


 ………

 ……

 …


「チッ…バレちゃしょうがねぇ…計画とは少し違ってしまうが、決行だ。」


 そして、ポケットから拳銃を取り出した彼は叫ぶ。


「手を挙げろ!!!強盗だ!!今すぐ金を出せ!」


 私の目は点になった。


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