第8話:クロネコ、復活する(エピローグ)
8-①
その後はトントン拍子に事が進んだ。
私が全力のぶちかましをクロネコさんにかまし、彼は気絶。司令塔を失った銀行強盗の一味は、統制を欠いた。
突然のまばゆいフラッシュと、『セーラーハート』の「撃ち抜くぞ」発言で人質に危険が及んでいると勘違いした警察は、この期を逃さずに、銀行内へと突入。銀行強盗BCは無事逮捕されることとなった。
世間を騒がせていた銀行強盗の逮捕を受け、テレビは連日この逮捕劇を放送することとなり、犯人逮捕に多大な貢献をした私は、テレビにはひっぱりだこ、警察からは感謝状をおくられることとなった。
だが、世間の盛り上がりに対して私の心は暗かった…私は依頼人の彼に辛い現実を告げなくてはいけないのだ。
大切な話があると言って、依頼人を呼び出した私は、いつも通り、事務所のソファーで、コーヒー片手に泣きながら『セーラーハート』を読みながら依頼人がくるのを待つ。
「ああ…クロネコさん…こんな面白い漫画を描く人が、まさか銀行強盗として捕まってしまうなんて…」
………
突然大きな音を立て、事務所の扉が開かれた。
「探偵さん!!!」
チェックのシャツをインし、ポスターをリュックに差し込んだいつもの出で立ちで私の事務所を訪れた彼は、部屋に飛び込んでくるなりこう言った。
「ありがとうございます!!本当に見つけてくださったんですね!!!」
こんなキラキラした目をした彼に、残酷な現実を突きつけなければならないのか…
私は逃げ出したくなる気持ちを必死に押さえ、
「え、ええ…見つけました…」
すると、彼は
「やっぱり!!流石は最近テレビで話題の名探偵ですね!!!実は今朝クロネコさんの磯スタに活動を再開するという投稿があったんです!!!
海外に二ヶ月ほど取材旅行に行っていたと書かれていましたが、探偵さんが裏で発破をかけてくれたんですね!!!これからはこれまで以上に精力的にバシバシ新作をあげてくれるらしいです!楽しみですね!!」
私の目は点になった。
Fin.
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