第7話:探偵、捕獲する

7-①

「自暴自棄になどなっていない。これは計画通りだ。」

 クロネコさんは笑って、私に告げる。


 何故だ!?なぜ彼はこんなことをしているんだ!?

 私が状況を理解できずに、混乱する中で、突如、銀行の受付の電話が鳴った。


 クロネコさんはゆっくりと電話に近づくと、受話器を取り、こう言った。

「オレがBlackCatのボスだ。人質解放の要求かな?」


 ああ、なんということだ。彼は、警察に対して人質を解放する代わりに、逃走用の車を要求しているようだ。


 まさか、せっかくクロネコさんを見つけたのに、彼は今話題の銀行強盗になっていた上、捕まえることなく現場から逃走されてしまうなんて…


 私は嘆いた。

 依頼を達成できない悔しさ、

 大好きな漫画家が犯罪者になってしまった悲しさ、そして自分の無力さを…

 感情が溢れ出し、クロネコさんから目を背け…


………


 その先で、先ほどまでがたがた震え、腰を抜かしていた若い銀行職員の姿が目に入った。


 その若い銀行職員の彼は、なんと昨日、私の事務所を訪れた依頼人だった。いつものいかにもファッションではなかったため、これまで全く気付くことが出来ていなかったのだ。


 彼は先ほどまでの私のように意識を失っていたが、それ以上に私の目を引いたのは、彼が左手につけている時計だった。


「そういえば、あの時計には、特定の言葉に反応してフラッシュと音声を再生する機能があったな。あれを使えばクロネコさんの意識を一瞬でもそらすことができるのでは?」


 私はこの作戦にすべてをかけることにした!!

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