第6話:黒猫、逃走する

6-①

 金庫から金を奪ったオレが待合スペースにもどると、オレの正体に気づいた例の探偵が目を覚まし、辺りの様子を伺っていた。


 こいつは油断がならない…

 そう直感で感じていたオレは、声をかける。

「ようやくお目覚めか?探偵さん?まさか、このオレの正体に気づくとはな。だが、一人でオレたちを捕まえることが出来ると思っているのは少し自惚れ過ぎだったな。」


 挑発するように言ったオレだったが、しかしヤツはこちらの挑発を意に介さず、

「こんなことはやめるんだ。あなたに何があったのかはわからないが、自暴自棄になるんじゃない。」


 まさかこの状態にあって、こちらの説得とは。

 オレはその姿に感服しつつも、笑って告げる。

「自暴自棄になどなっていない。これは計画通りだ。」


 その時、ふと銀行の受付内で一本の電話が鳴った。人質解放の交渉だな…。

 オレはゆっくりと電話に向かい、受話器を取った。


………


「もしもし、警察だ。君達のボスと交渉がしたい。」

「オレがBlackCatのボスだ。人質解放の要求かな?」

「その通りだ。君たちの要求はなんだ?」

「逃走用の車の用意をしろ。30分以内だ。もし間に合わなければ、人質を一人ずつ殺していく。」

「わかった。急いで準備をする。それまでは人質に手を出さないでくれ。」


………


 そうして受話器をおくと、オレは例の探偵に向かい勝ち誇ったようにこう告げた。

「残念ながらゲームオーバーだ。あと30分で逃走の準備が整う。オレたちまでたどり着いたことは見事だったが、お前はここでオレたちが逃げていくのを

指を咥えて見つめることしか出来ない!」


 だが、例の探偵はフッと笑うと、こちらをみてこう言った。

「残念ながらゲームオーバーなのは君の方だよ。これで私は確信した。30分待たずとも、今すぐにでも君のハートを撃ち抜いて見せよう」


 バカな!拘束され、身動きを取ることのできないヤツがどうやってこのオレを出し抜くというのか。

 ハッタリかと思うものの、ヤツの瞳は怪しくギラリと光っており、簡単に目を離すことが出来ない…


 その時、視界の端でキラリと何かが光ったかと思うと、目の前が真っ白な光で塗りつぶされた。

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