第2話:探偵、捜索する

2-①

『磯スタグラム』

 写真を簡単にアップロードすることができる上に世界中の人から、撮った写真などをヨキ!してもらうことができるこのSNSは、若者だけでなく交流に飢えた年輩の方々すらも虜にし、サービスを拡大し続けている。


 そして、この『磯スタ』は、探偵の私にとっても

非常に有用な情報収集ツールだ。情報セキュリティの甘い人々は、アップした写真からどれだけの情報が漏れているかを理解していない。写真に写りこんでしまった背景や、反射した映像などから、趣味や年齢、性別、そして住所さえもばれること、その可能性と怖さがわかっていないのだ。


 早速、私は漫画家クロネコの『磯スタ』にアクセスし情報収集を始めたのであった。


………


 磯スタでの情報収集を始めて3週間が経過し、私は漫画家クロネコの正体について、完全にしっぽを掴んでいた。


 覆面漫画家として活動しているクロネコさんだったが、どうやら情報セキュリティーに関してはあまり気を使っていないようだった。

 その日食べたものや使っている道具、仕事場の写真など、日々『磯スタ』にアップしていた写真をよくよく観察していくと、プロである私の目からみればバッチリと情報が写りこんでしまっているのだ。

 そういった情報をまとめていくうちに、どんどんとその姿は丸裸となっていった。


「まだまだ脇が甘いな。」

 私はコーヒーを飲みながら、事務所の応接机でクロネコさんの情報をまとめることにした。


………


「漫画家クロネコ」

・年齢:20~30代

・性別:男性

・代表作:魔法少女漫画『セーラーハート』

 社会人でありながら、漫画を連載し続け、累計1000万部を超える超人気漫画家となった。最近はなぜか更新が止まってしまっており、漫画好きの人々を悲しませている。

 趣味は、漫画と銭湯めぐり。好きなものは黒猫。


 住んでいる場所は、なんと私が住むこの町とほど近い閑静な住宅街が立ち並ぶエリア。外出する際は、真っ黒なパーカーに黒猫のモチーフが入ったバッグを持って出かける。

 そして、給料が振り込まれる毎月25日には、必ずこの町の一番大きな銀行に赴いて生活費をおろしているようであった。


 "ここまでわかればこっちのものだ…"

 私はニヤリとほくそ笑み、依頼人を呼ぶことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る