出会い
はあ、今日も学校か……。スマホの日付を何度確認しても月曜日からは一向に変わらない。あんな憂鬱な事があっても、いつもの日常はやってくる。学校では夢咲さんと会うし、俺にとってのいつもはもうない訳だが……。学校でなるべく合わないようにしても、神のいたずらか、今の席順は夢咲さんの隣なのだ。ペアワークやなんやらで確実に話さなければならなくなる。待てよ……それ以前に俺が夢咲さんと別れたことがなんらかの形でばれている可能性だってあるじゃないか。もしそうだとしたら絶対いじられる。
「この世の終わりみたいな顔してどうしたの?」
振り向くと、よく夢咲さんと一緒にいるところを見る女子が立っていた。名前は確か、若林凜花だった気がする。同じクラスではないが、夢咲さんと同様、入学当初から噂になっていたのでなんとなく覚えていた。俺の周りの人達(主に男子)が騒いでいたので、何故なのかは気になっていたが、こういうことか。
少し青みがかった髪を後ろにポニーテールにし、前髪もきっちり揃えている。バランスの取れた端正な顔は、まさに清楚系彼女を夢見る男子には天使にも見えるだろう。俺は夢咲さん一筋なので靡くことはないが。
「そんな顔してた?っていうか若林さんとは喋ったことなかったよね」
「うん、そうだね。クラスも違うし、見たことなかったけど、あまりにも酷い顔してたからイケメンが台無しだなあって」
ああ、なるほど。これが数多の男子を虜にしてきたスキルか。俺も一瞬だけ可愛いと思ってしまった。
「お世辞はいいよ。それよりもう朝礼始まるから早く行かないと」
「お世辞じゃないのに」
「なんか言った?」
「ううん、なんにも。それより連絡先交換しない?最近千里の事で相談あってさぁ」
「うん、いいよ別に」
本当はもう夢咲さんの事で相談は乗れないだろうけど、出来る限り別れた事は伏せておきたい。そう思い、もう連絡を取らないだろう友達を追加した。
「ありがとー。あ、今日日直だった!早く行かなきゃ。またねー神崎くん!」
廊下を走りながら、女の子の模範的な爽やかな笑顔を残して去っていった。さぁ、俺も行かないとな。
今までなら絶対に思わなかった、夢咲さんに会う事を憂鬱に感じながら重い足取りで階段を一つ一つ登った。
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