第48話 ドッキリ

拓海が着替えだと偽って渡した警官は、中身を軽く確認してそれを橋爪に渡す。


「ーーうまく行くといいなぁ」


警察官(山中光太)が耳元で呟くように言った。


彼は背が高く180㎝前後だろう。

角刈りに眼鏡をかけている。特徴と言えば後ろ姿だ。頭皮のてっぺんが寂しくなっている。

まだ若そうに見えるのに、頭があんなに剥げているのは可哀想に見える。


「ーーうまくやって下さいよ??」


橋爪が悪い顔で、ニヤッと頬笑む。


ーー任せておけ。


警官が得意気に親指を立てる。

どうやら彼は共犯であるかのように見える。

橋爪がやろうとしている計画の一部分なのだろうか。


その夜。

刑務所担当の刑事は、山中光太やまなかこうたである。


ついに「計画」は実行される事になった。


時計の針が、深夜の2時を差し示したちょうどその時。


山中光太が巡回と言う名目で、俺の部屋のカギを開けてくれる。


隣の部屋の男、高橋達也たかはしたつや。ーー彼はもう熟睡をしている。時刻的にも当然だ。


山中光太も眠そうで、アクビを繰り返している。


隣の部屋にドライアイスを置き、煙玉を入れてから、ドライアイスに少量の水を注ぐ。

あっという間に、その部屋は煙だらけになった。


「ーー火事だぁ、火事だぁ。おい、起きろー」


彼の部屋は拓海の部屋と2つだけ、切り離されていて、他の部屋とは随分距離がある。だからこそ仕掛けられた。


「ーーおい、高橋。火事だ、火事だぞー!!起きろー!!」


楽しそうに警察官の山中光太が耳元で騒ぐ。


「ーーちょっとー真面目にやってくださいよー!」


橋爪が言う。


「あぁ、そーだな。悪い悪い」


元々の知り合いなのだろうか?気軽な口調で二人は話している。


「おい、火事だ。ーー高橋、逃げ遅れるぞ!!」


今度はホントに火事っぽく聞こえる言い方だ。


「ーーうーん」


高橋容疑者は唸っているが、まだ目が覚めていない。


「やっちゃいますか?」


橋爪が言う。


「それがいいだろうーー山中が言う」


ドライアイスに水を注いだせいか、まだ煙が上がっている。


警官が火災報知器を鳴らす。


「ーー火事です。火事です。急いで避難してください」


橋爪達の部屋の方だけにアナウンスをかける。


「ーー火事です。すぐに避難してください」


高橋達也は目をパチッと開ける。


「ーー逃げろったって、、カギ、、カギ開けてくれー!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る