第46話 なぜ?

俺は警察官に追い返されたその日のうちに、笠原に電話をした。


「もしもし」


呑気な笠原の声が受話器越しに響く。


「俺です。山崎拓海ーー」


「分かってるわよ。どーしたの?」


「俺、昨日ーー警察に自首したんです。そして、目撃者がいると話したのに、追い返されちゃってーー。目撃者なのに、どーして証言してくれなかったんですか?」


「橋爪の意思だからよーー今回だけは特別に目を瞑っておいてあげる」


「あのーー橋爪さんはどうして俺なんかの事を守ってくれるんでしょうか?」


「ーー直人さん、言ってたわよ!あなたの事が大好きみたいよ?」


「ーーだからって、、不自然じゃないですか?人の罪を被って刑務所に入るなんて」


「ーー何か考えがある事なんでしょ?放っておけばいいんじゃない?」


どこか、冷たい。

薄情な言い方に聞こえた。


彼は、娘(すみれ)さんの事も事実だろうが、笠原夫妻と上手く行ってなかったからホームレスになったんじゃないだろうか?


俺はそう思ってしまった。


「あなた方も、犯罪者の家族になってしまうんですよ!今更ですがーーそれでもいいんですか?」


俺は聞いた。


「そんなの分かってて、直人さんは勝手な事をしているのよ!ーー1度言い出したら、全然聞かないんだから。もー知らないわよ!」


笠原が怒っている。

俺はこんな感情的な彼女を見るのは初めてだろうか?


「ーー私たちはもう橋爪とは縁を切ると思う。だけど、あなただけは橋爪の味方でいてあげて!」


笠原が頭を下げた。


どうも笠原の感情が読めない。

飲みに行っていても、何をしていても、何も分からない。

それが本心か、そうじゃないのかも。


表情と言うものがないのか?ーー彼女にはは??


「縁を切るなんて、橋爪さん、可愛そうじゃないですか?」


「ーー元々の家族に戻るだけよ!それが橋爪の望みなんだから」

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