第38話 拓海vs橋爪

面会。


いつものように受付をして、俺はいつもの場所で待っていた。


看守さんもいつもの人ではなかった。今回は細身の女の人だ。


「では、ご案内します」

 

そう言って俺を導く。

面会室の椅子で座っていると、すぐに橋爪さんが手を拘束されて来た。目の前で手の拘束をほどかれ、俺の目の前に座る。


「橋爪さん、、今日は俺、知りたい事があって来ました」


「ーー知りたい事?」


「あなたは、笠原佐知子さんを知っていますか?」


「あぁ、俺の兄の嫁だろ?」


「彼女に会いました。そこで彼女に問われました。ーーなぜ俺は自由の身なのか?と」


「そうか」


「なぜ、家族がいる事を教えてくれなかったんですか?そして、なぜ俺の為に捕まってるんですか?」


「お前は気にしなくていい。だけど、あの件だけ頼むな!!」


「はい。でも、俺、自首しようと思います。あなたにすべての責任を押し付ける訳にはいかない。あなたは本当の事を話してください」


「そう言う訳にもいかないんだよ!拓海。俺を犯人にしておいてくれ!これも計画のうちなんだ」


橋爪さんはそう言う。橋爪さんはこんなにも頑固だっただろうか?

ともあれ、俺は俺で自首をする。

それが俺らしく生きる、と言う事に繋がるだろう。


「俺らしく生きる為に、俺は自首します。橋爪さん、かばってくれてありがとうございました」


「ーー時間だ」


刑務官の冷たい声が響く。


ーーもう終わりか、、。


「橋爪さん、これからしばらく会えませんね!またいつの日か、、」


俺は面会室を出て、その足で警察署へと向かう。

警察署の透明なガラス戸は、重たい音を立てて開いた様に感じられた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る