第37話 集会

その日。

公園では夜な夜な不気味な影が動いている。


ホームレス歴が長い長老が、静かに声を発した。


「ーーお疲れ様」


今にも消えてしまいそうな声だ。

長老は更に言った。


「今日の議題は今一番、問題になっている橋爪直人の事だーー彼は人を殺し、隠した。。

彼の人柄は悪くない事は知っているが、その行動をした彼を許せるか?君たちの思いを聞かせて欲しい」


長老は一枚の紙を配った。


「人がいては正直な意見が言えない者も多いだろう。その紙に意見を書いてくれ!ーーそれを参考に今後の彼の処遇を決めようと思う」


痩せていて、目が異常に大きい。

まるで骸骨の様に見える風貌だ。


この辺一体のホームレスを束ねているこの男こそ、三枝四郎さえぐさしろうと言う。


ホームレスたちの集会を始め、毎度毎度、議題を決める事にしたのも、毎週水曜日だけ会議の様な事をする事にしたのも、すべて三枝の発案だった。


ホームレスの間では彼に逆らう者はいなかった。

それぞれが三枝に相当な信頼を持っている。

彼に洗脳でもされているように。


彼はホームレス仲間の事を第一に考えている。だからこそ、みんながついていくのだろう。


皆が記載した紙を三枝が集めて回る。


「いろんな方の意見を踏まえた上で、今後の橋爪さんの処遇を決めます。その際、また集会を開きますので、皆さん、お集まりください」


ーーはい。


「今日の集会はこれまでーー解散」


その言葉とほぼ同時にホームレスたちがバラける。

自分達の住み処へと帰っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る