第33話 居酒屋ノレン2

拘置所を出ると俺は、毎日の様に行っていたが、橋爪さんが刑務所に入ってしまってからは来ていなかった居酒屋ノレンに顔を出した。


あの日から少し居心地の悪さを感じている。


「ーー空いてる?」


「あぁ、久しぶり!カウンターおいで」


白髪のマスターが俺にカウンターを進める。

この店のシステムでは、一人だとカウンターになるらしい。


俺はとりあえず生を注文した。


カランカラン。

鈴のような音が店内に響いた。


どうやら、客が来た様だ。


「ーーいらっしゃーい」


マスターが笑顔で客を迎え入れる。

するとすぐ、カウンター越しに生ビールが出される。


俺の横に座り、女は言った。


「久しぶりね、、」


驚いて顔を上げると、そこにはあの時の悪夢の欠片とでも言うべき笠原佐知子がいた。


「その節は、、どうも」


まだ一ヶ月程度の時間しか経っていないような気がするが、もう少し時間が経っているのかも知れなかった。


「私も生1つ」


笠原が生を注文する。


「それで、俺になにか??」


「あなたとちゃんと話したくて、ここに来たのーーあの時の事」


ーーあぁ。


「ーーもういいですよ。どーでも!!俺はもう帰りますから」


つっけんどんな言い方だったかも知れない。

でも、人に気を使える様なそんな余裕など、今の俺にはなかった。


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