第32話 橋爪の秘密

面会室に通されると、意外とすぐに手を拘束された橋爪さんが出てきた。


「ーーまたあったな、、」


橋爪さんが言う。


「ご無沙汰しています。今日はちゃんと伝えたい事があって来ました」


拓海は言った。


「ーー先に、俺の話、聞いてくれるか??ーー決意が鈍っちまいそうなんだ」


橋爪さんが言う。


「ーーいいですよ!」


笑ってそう答えた。俺もまた決意が鈍りかけている。既に、もう次回にでも伝えられたらいいかーーとすら思っていた。


「ーーあのな、俺、、居酒屋ヤマメを逃げるようにして辞めただろ?」


「はい。そうでしたね。見つけるの、大変だったんですよ!」


「ーーあの頃から俺、お前の事が大好きで、いつも見守っていたくて、、ホームレスになったんだ」


「ーーえ??それって橋爪さんをホームレスにしたのは、俺って事ですか?」


目を丸くして拓海が聞く。


「いや、そーじゃない。お前にこの気持ちを伝えられずーーストーカーのようにお前を見守っていた俺が悪いんだ、、」


「それじゃ、ずっと俺の側に??」


「ーーあぁ。やっぱり気付いてなかったか」


「ーーすいません。いろいろと問題ばかりだったんで」


「知ってる。ストーカーに関しては触れないのか?」


「ーー俺も橋爪さんの事は好きなんで、近くにいてくれたんだと思うと安心しちゃって」


「ーーそーゆー受け取り方??」


肩の荷が降りたように、橋爪さんが軽く笑った。


「もっと早く言ってくれれば良かったのにーー」


「ーーそれで??」


橋爪さんが突然、俺の話に持っていく。


「ーーあぁ、えと、、うーんと、、」


突然振られたからか、何て切り出していいのか?わからない。


「あの手紙に書いてくれてあったじゃないですか?」


「手紙?」


「はい。俺らしく生きろ!ってーー」


うん、とでも言いたげに、橋爪は頭を上下に上げ下げしている。


「ーー時間だ」


看守さんがそう言ってきた。


ーー早い。もう15分が経ったのか。。。


「ーー近いうちにまた」


「あぁ」


橋爪はその目に光を宿した様にして、笑いながら言った。


「待ってるぞ」



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