第27話 居酒屋ノレン
扉を開くと微かに鈴の音がした。
「いらっしゃい」
白髪で眼鏡の年輩の人が言う。
ーーここで、この店で、、俺の人生は終わった。
ふぅ。
口を衝くようにして、重い吐息がこぼれる。
「とりあえずビール」
俺は生ビールを注文した。
この店に来たからと言って、時間が巻き戻る訳ではないが、この店に何となく足が向かっていた。
やはり笠原はいなかったーー。
笠原がきたら、俺は一体どーゆー顔で会えばいいんだろう?
ウソか、ホントか、真実はわからないが、俺は彼女の結婚相手をコロシタ男なのだ。
頭を抱える。
この店に来てもう一時間以上が経っているが、考え事が先立っていて、ビールはまだ一口、口をつけただけーー。
「ーーお客さん、どーしました?」
人当たりの良い顔で笑って、白髪のマスターが聞く。
「ーー」
言える訳がない。
人をコロシテ、自分は逃げてるが、別の男が俺をかばって捕まっているから、どーしていいか、わからないなどとーー。
「会計して」
俺は会計を済ませた。
よく行っている居酒屋なのに、あの事が起きてから、とても居心地の悪い店になってしまった。
それはそうだろう。
オレがヒトをコロシタカラ。
これまで以上に人の視線が気になってしまうのも、もはや仕方のない事なんだろう。
ふぅ。
重く深いため息。
俺は覚悟を決めた。その時、またしても俺は彼女と再会してしまった。
一言も交わさず、笠原とすれ違うようにして店を出た。
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