第16話 橋爪直人
あれは俺がまだ高校生の頃。
バイトを始めたばかりで、受かれていた。憧れの社会人になったという事に俺は、はしゃいでいた。
そんな時、
初めてのバイト先は、軽食店だった。
たこ焼きや、ラーメン、お好み焼きなどを提供する。
そんなお店だ。
橋爪直人はその時、その店「ヤモメ」の経営者兼店長だった。
「ーー本日からお世話になります。山崎拓海です。初めてなのでわからない事ばかりですが、いろいろと教えて下さい」
拓海は緊張した面持ちで自己紹介をすると、深々と頭を下げた。
「ーーこれから頑張ってくれよ!」
そう言って、
そんな風に言われて嬉しかったのもあり、店内の雰囲気の良さもあり、拓海にはこれからの未来に希望しか見えなかった。
ーーこれからは、ここで頑張ろう。
拓海はそう誓った。
だが、頑張ってはいても、空回る事が多く、接客業は短気な拓海には難しい、と痛感した。
所謂クレームだ。
その対処をするにも上手く出来ず、言葉足らずな拓海は、お客さんを更に戸惑わせ、怒らせる。
そんな日が続いた。
頭を抱える拓海に、
「拓海、、お前な。クレームの処理とかしてる場合じゃないだろ?お前は俺が雇ってるんだ、、。クレームの処理は俺に任せろ!だから、お前は、お前に出来る事をしろ!」
あの時の言葉ーーそれだけが俺の心の支えだった。
※
夜逃げをする様にーー。
行方不明になった彼を俺は探していた。だが、彼はなかなか見つからなかった。
そんなある日、街をフラフラと歩いていると、彼を見つけた。
彼は昔の面影はあるものの、ホームレスに成り下がっている。
ーーまさか、この人が橋爪さん?
半信半疑で、俺は彼に近寄った。
「もしかして、橋爪直人さんですか?」
突然、声をかけられて驚いたのだろうか?彼の大きな目が、余計に大きくなった様な気がした。
「ーーそうですが、あなたは??」
「忘れちゃいました?高校生の時、初めてのバイト先の「ヤモメ」では、お世話になりました。
「あぁーーあの時の、、随分と大きくなって」
「ーーそれよりその姿どうしたんですか?」
「ーーどうもこうもないよ。俺はあの時貯めたお金は今でも持ってる。だが、仕事をする気になれなくなっちまったんだーーだから、家を借りるのもめんどくさい。もう普通の暮らしには戻りたくないんだ!」
彼はそう話した。
「一体、何があったんです?」
「いろいろとな、、現世に嫌気が差しちまってな、、」
それ以上、彼は話してくれなくなった。
だが、何かがあった事は明白だった。一体彼に何があったんだろうか??
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