第4話 遺体発見

昨日の同窓会の時が、まるでウソのように大雨が降っていた。


ーー台風直撃。


今ここは台風の目の中心だ。



透明なカッパを来て、傘を差したスーツの男達が現れた。


「ーー状況は?」


辺りを見渡す。

建物も何にもない。おそらくここは人通りもほぼないような場所だろう。

この近所には家すらない。


「被害者の名前は鈴原カイト《すずはら》カイト。見ての通り、殺人だと思われますーー遺体はそこにある元、冷蔵庫だったものの中に隠されていました。たまたま雨宿りにきたホームレスが、遺体を見つけたそうです」


ーーおそらくこのホームレスが来なければ、彼はきっと見つかる事はなかっただろう。


「第一発見者は?」


「ホームレスの橋爪直人はしづめなおとです。彼はそこにある公衆電話から、警察に連絡してくれましたーー彼がそうです」


第一発見者の元に近づく。

だんだんとそのイヤな匂いが鼻につきまとう。

間近で見ても、肌の薄汚れた男だ。

髪はザンバラで、何の手入れもされていない。どこで眠っているのか?顔の至るところに泥をつけている。

何より臭い。

お風呂に入らないと、こんなにも匂うのか。


「遺体を見つけた時の話を聞かせてもらえますか?」


思わず自分の手で、鼻と口をふさいだ。

刑事とて人間だ。

臭いものにはなるべく近づきたくない。これは誰でも一緒だろうーー。


「はい」


息も臭い。


刑事はだんだんと具合が悪くなってきたような気がした。


「この雨の中、、外にいられなくて、ダメだとはわかっていましたが、ここで雨宿りをさせてもらおうとしたんです。そしたらお腹がすいて、、何か食べるものがないか?と冷蔵庫のようなものを開けたんです。そしたらーー」


不法侵入の事は、咎める必要もない。

何せここはただの廃墟だ。

誰のものでもない。


「不審な人は見ていませんか?」


「見ていません」


「ご協力ありがとうございます。また何か聞く事もあるかも知れませんが、、」


橋爪直人はしづめなおとは、不思議そうな顔で刑事の後ろ姿を眺めていた、、。


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