第2話 同窓会
この日。
台風が発生したようだが、雨もなく風も強くはない晴天だ。
二週間くらい前、ポストの中に葉書が一枚入っていた。
「同窓会のお知らせ」
それに出席と記入して、返送した。
今日がその日だった。
何人くらいの人が参加するんだろう?どちらにしても、手放しで楽しめるはずはない。
あの事件がまだ新鮮で、俺の頭の大半を占めている。
朝のニュースではまだ告げていなかったから、おそらくまだ発見には至っていないのだろうが、俺は心配だった。
中学時代のクラスメート達は30名弱だった。だが、今回は十数人しか揃わなかったらしい。
参加者の五名が女子。残り八名が男子だ。
五名の女子のうち、一人は俺の初恋の相手だった。
昔のまま、彼女は何も変わっていない。
初恋の彼女は「タカサキ」と言う姓になっていたが、元は「ナカムラ」だったはずだ。
彼女は旧姓、中村楓と言い小柄な体型で、目力のある女性だ。
姓が変わって、少し大人びてはいるが、まだ変わらない印象を受ける。
あの時、何もなかったなら口説き落とそうと努力はしたかも知れない。
今はそんな事にすら余裕が持てない程の心理状態だ。
何とか二時間ほどの宴会を終えると、俺は言った。
「少し体調が優れないので帰ります」
「なんだよ?山崎、、帰るのか?もー少し付き合えよ」
そう言ったのは、幼馴染みの河下ゆずるだった。
「悪い、、今日はムリ、、」
トボトボと家に向かう。
どうしても、今日は一人になりたかった。飲んで騒ぐような気分でもない。酒を飲むような気分にもなれない。だけど、、ただ家に向かうのも寂しい気がした。
同窓会ーーそれに来ていても、心ここにあらずで、周囲の背景さえ、モノクロに見えた。この宴会中の会話やバカ話も、同窓会の醍醐味なはずだ。なのに、何もかもがなかった事の様でーーただボンヤリとそれを見ていただけ。まるで、同窓会に参加さえしていないよーに、、。
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