第5話 第1回目の『婚約破棄宣言』
「ち、違う!そうじゃないぞ!いいかっ?!お前が俺の婚約者に決まったのはなぁ、俺の足を傷つけたからだっ!」
王子様は自分の包帯を巻かれた右膝を指さしながら言った。
「ええっ?!その怪我は王子様がブランコから飛び降りた時に怪我したのですよね?どうして私が傷つけたと言うのですか?!」
あまりの滅茶苦茶な話に、王子様に反論してしまった。
「うるさい!もとはと言えばお前がブランコから飛び降りるのは誰でも出来るなんて嘘をついたからだろう?!」
「だって、私の友達も皆出来ますよ?」
そこまで言ってしまい、ハッとなって口を押えた。いけない、これじゃ飛び降りて怪我した王子様を馬鹿にしているように取られてしまうかもしれない。
案の定、王子様は顔を真っ赤にさせてブルブル震えている。いけない…余計に怒らせてしまった。
「お、お前と言う奴は…ほんとーに!生意気な奴だなっ!お前なんか俺の傍に置いて一生虐めて、こき使ってやるからな!覚えておけっ!」
王子様はそれだけ言い残すとプンプン怒りながら立ち去ってしまった。
「ええ~そ、そんなぁ…」
ひょっとすると私を婚約者に決めたのは国王様では無いのかもしれない。第二王子様が私のせいで怪我をしたと逆恨みして、一生虐める為に婚約者に決めたのかもしれない。
「あんまりだわ…」
たった10歳で自分の将来が決められてしまうなんて悪夢だ。思わずため息をつくと後ろから声を掛けられた。
「大丈夫だったかい?弟の無礼を許してあげてくれないかな?」
「え?」
突然声を掛けられて驚いて振り向くとそこには第二王子様と同じ銀の髪に…青い瞳の男の子が立っていた。その人は私よりもずっと背が高かった。
「あの…?」
首を傾げると彼は笑って私を見た。
「ああ。ごめん。自己紹介もしないで突然声をかけちゃったね。僕はローレンスの兄で第一王子のレオンハルト・アルフォードだよ。レオンと呼んでくれると嬉しいな。ミシェル」
「え?私の事を知っているのですか?」
「勿論だよ。弟の将来のお嫁さんになる人なんだからね」
「そうなんですか…。でもローレンス様にどうやら私は嫌われているようです。さっきローレンス王子様に言われたんです。私を婚約者にしたのは自分の足をケガさせたからだと言って…」
するとレオン様は驚いた様子で言った。
「ええ?ローレンスがそんな事を言ったの?!」
そして首を捻る。
「はぁ~でもよりにもよって私を嫌っている人が婚約者だなんて…」
「まぁ、そう言わずに仲良くしてあげてくれよ。ちょっと乱暴な処はあるけれど、根はいい子なんだ」
レオン様はお兄様という立場からローレンス様をかばっているけれども…。
「どうせ婚約者になる方だったら、レオン様が良かったです」
だって優しそうだから。しかし、私がその言葉を言った時、何故かレオン様は真っ青になってこちらを見ている。そして何故か背後で恐ろしい殺気を感じて振り向くと、何とそこにはさらに怒りを倍増させたローレンス王子様が立っていた。
も、もしかして…今の話、聞かれてしまったのだろうか…?
「お、お前…い、今…な、何て言った…?」
「い、いえ。あの…」
どうしよう!完全に聞かれていた!
「こ、こっちからお前なんか願い下げだっ!お前なんか今、この場で『婚約破棄』してやるっ!」
ローレンス王子は私を指さして叫んだ。
これが初めてローレンス王子から受けた記念すべき?第1回目の『婚約破棄宣言』だった―。
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