第3話 強気な男の子
「ウワアアアアン!痛い!痛いよぉおお!」
ブランコの前で泣き叫ぶ男の子。
男の子は何とか飛び降りる事が出来たけれども、バランスを大きく崩してそのまま転んで右膝を大きくすりむいてしまった。ひざ丈のズボンが悲劇を招いてしまったのだ。だけど、怪我の様子はそれ程大したことでは無い。血だってあまり出ていないし。
「ちょっと待っててね。膝をすりむいて泥が付いているから洗った方がいいわ」
丁度近くに噴水があったので、そこでハンカチを濡らして戻ってくると男の子の膝をそっと拭いた。
「ばかやろ!痛いじゃないかっ!」
「でもバイキンが入ったら大変だから」
私が言うと男の子は静かになった。
「…」
そこで濡れたハンカチで綺麗に傷を拭いてあげると、血は殆ど止っていた。
「良かった、それ程大した傷じゃなかったわね」
言いながら、予備のハンカチを細長くたたんで男の子の怪我した部分を縛ってあげた。
「はい、これでとりあえず大丈夫。でも後できちんと消毒した方がいいわよ?」
「…ありがとう」
すると今まで無言だった男の子がようやく口を開いた。
「いいえ、どういたしまして」
ニッコリ笑うと男の子はそっぽを向いてぼそりと言った。
「全く…生意気な女だ」
そして立ち上がった。
「大丈夫?歩ける?肩を貸してあげましょうか?」
手を差し伸べたらパチンと叩かれてしまった。
「え…?」
「ふん。無礼な女だ。この俺に勝手に触れるなんて」
そして私からくるりと背を向けると、右足を引きずりながら去って行った。
「大丈夫かな…?」
男の子の姿が完全に見えなくなるまで見届けると、私は再び薔薇園の散策を続けた。
それからしばらくたっての事―。
「ミシェルー。何所だーい?何所にいるんだーい!」
お父様の声が近付いて来た。
「ここです!お父様っ!」
するとすぐにお父様が現れた。
「ミシェル、ここにいたのかい?」
探し回ったのか、お父様はハアハアと息をきらしてる。
「ごめんなさい、お父様。」
「いや、いいよ。それよりミシェル。実は今日、本当はミシェルにお友達を紹介してあげようと思ってこの城に遊びに来たんだけど…どうも都合が悪くなってしまったらしいんだよ。だから今日は帰ることにしよう」
「分りました。帰りましょう?」
私はお父様に連れられて、城を後にした。
そしてその日の夜―
突然城から使いの人が訪ねて来て、王様から私を王子様の婚約者にしたいので明日、城に再び来るようにとお呼びがかかったのだった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます