第2話 薔薇園の出会い

 母方の祖母が小国の出身の王女である私、ミシェル・カレッジとこの国の王子であるローレンス・アルフォード王子と婚約をしたのは今から8年前、共に10歳の良く晴れた春の日の出来事だった。


その日、私は生まれて初めて父と一緒に城に呼ばれて遊びにやって来ていたのだ。


「うわ~。真っ白で綺麗なお城…」


私は生まれて初めて見る大きな城に感動していた。そして美しい薔薇の庭園が目に留まった。


「お父様、あのお庭…綺麗な薔薇が咲いています。見て来てもいいですか?」


「ああ、いいよ。迷子にならないようにな?」


お父様が優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でた。


「はい、では行ってきます!」


青いワンピースを翻し、私は薔薇園に向かって駆けて行った。



****


「うわ~…綺麗なお庭…」


私よりも背の高い薔薇たち。青や赤、黄色…とても豪華で美しい。私は薔薇の花に触れて見たり、香りを嗅いでみたりと薔薇の庭園を散策していると、ふと突然目の前が開けて、目の前に真っ白な木目のブランコが飛び込んできた。


「わ~ブランコ!」


私はブランコが大好きだった。


「乗せてもらお~っと」


ブランコに駆け寄ると、早速乗って勢いよく漕ぎだす。


キィ~コ~

キィ~コ~


前に見える景色が遠くなったり近くなったり、耳元でびゅんびゅん風の音が鳴るのが楽しくて私は夢中になってブランコを漕いでいた、その時―。


「おいっ!お前っ!」


突然声を掛けられた。


「え?」


驚いてみると私の近くで同じ年齢位の銀の髪の男の子が私を睨み付けていた。誰だろう?何だかすごく怒っているみたいだけど。それでも構わずブランコを漕いでいると、さらに男の子は私を見て怒った。


「そこのお前!聞こえないのかっ?!すぐに降りろよ!それは俺のブランコだ!勝手に乗るなよっ!」


え?そうだったの?!大変。黙って乗っちゃった。


「えいっ!」


私は大きく揺れているブランコから一気に飛び降り、両手を横に挙げて地面に降り立った。そして男の子を見ると、唖然とした顔で私を見ている。


いけない!またやっっちゃった!お母様から女の子はおしとやかにって言われていたのに。


「あ、あの…今のは…」


すると男の子は手を叩きだした。


「すっげー!あんなに大きく揺れているブランコから飛び降りるなんて…お前、女のくせにすげーんだな?」


随分口の悪い男の子だけど…ひょっとしてこの薔薇園を管理している人の子供かな?

だけど、ブランコから飛び降りるなんてレディー失格だ。


「あの、今のは誰にも言わないで欲しいの。お願い」


必死で頭を下げると男の子は言った。


「別に誰にも言わないけどさ~おい、あれって誰にでも出来るのか?」


「え?ええ。誰にでも出来るわ」


本当はそんな事無いけれど、おてんば娘とは見られたくなかった。


「よし、誰にでも出来るなら俺もやってみよう」


え?一瞬固まっている間に男の子は乱暴にブランコを漕ぎだし、あっという間に大きくブランコは揺れている。


「よし!やってみる。簡単なんだよな?見てろよ!」


「え?キャア!待って!危ないわよ!」


しかし、男の子は私の制止も聞かず、飛び降りてしまった―。



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