第55話 [被験体0000]
「ふんふふんふんふん〜ん♪」
帰宅後は風呂に入るために洗面所で服を脱いでいる。あのパフェを食べれてので上機嫌なのだ。
だが、俺が鏡に映った上裸の姿を見た時、『ん?』という素っ頓狂な声を漏らした。
「……あれ? 【
鏡に映った俺の左腹。そこに謎の傷跡が残っていたのだ。肌をそのままべりっと剥がしてそのままにしたような傷が……。
「……ま、いっか。早く入って早く寝よ」
大したこともないだろうし、俺は気にせず風呂に入った。
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「……案外、普通の高校生でしたね、最上様は」
マスターがアタシに向かってそう言ってくる。
「ああ、それにアイツは気づいていない様子だったぜ。自分が〝被験体
二人の高校生が殺害された事件で、秘密組織からアタシを助けた悪魔の色が見えた。
それを追おうとしたが、見つけられなかった。けれど、代わりに
「最上様の能力は何かわかりましたか?」
「……いんや、それが全くわからなかった」
「やはり、
「見えたのは、超巨大な〝渦〟だ。この世界……いや、宇宙全てを巻き込むような巨大なものが見えた。詳細は全くわかんねぇ。
アイツがまだカプセルに入ってた幼少期は数字でしか会話できてなかったが、成長してたみてぇだ」
それに、あの時あった頃の目の色は瑠璃色だった気がしたが……。そこも変わっていたようだ。
思い出そうとしたら、背筋が凍りそうになる。あの時のアイツにアタシは命を救われたが、目の前で何十人とも組織の連中が一瞬で消滅した。
「末恐ろしいなんてもんじゃねぇぜ……。アイツは最恐だよ」
「ですが、今では温厚で慈悲深そうですね」
あの頃のアイツと本当に同一人物かと見間違えるほど温厚な色になっていた。
「組織のもんも見つけてないわけがないし、泳がせてんだろうな」
「我々が守るしかありませんね」
「あ? アタシらがなんでそんな面倒なことしなきゃならねぇんだよ」
キュッキュッとグラスを磨きながらマスターはこう答える。
「子供だろうと大人だろうと、歳それぞれに〝青春〟というのがあります。その時しか得られない青春を、失うわけにはいかない。ましてや、子供の青春を奪うなど言語道断。
子供の頃の青春は、良い大人になるための糧となるのですよ」
「…………よくわかんねぇや」
「不知火様ももう少し歳をとればわかりますよ。……そうですね、あの探偵様と青春をするのもいいんじゃないですか?」
「ばっ!! バカなこと言ってんじゃねェ!!!」
全く……どいつもこいつもアイツとくっつけようとしやがって……。
というか、アイツと最上はどうも似ているんだが、何か関係があんのかなぁ。気が向いたらアイツに話してみっか。
「マスター、おかわり」
「飲み過ぎは、程々に」
「クソが」
「口が悪いですね、昔から変わらずに」
……そういえばだが、静音とアイツらって同じ学園に通ってんだよな。静音のやつ、自分の能力について話したのか?
――能力を二つ持ってるって。
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