第54話 [幼馴染幽霊とこの世界のしくみ]
「彩羽さんは、どんな力を持っているんですか?」
「他人を知りたいならまず自分から話しさせよ」
「……わかりました。でも、誰にも話さないって誓えますか?」
「安心しろよ、ぜってぇ言わねぇから。ちなみに、そこのマスターも力持ってっから安心して話せよ」
……俺が思っているより、この世界は異常なのかもしれないな。
「じゃあまずは俺から。俺の名前は最上強谷、剣と魔法のファンタジー世界から転生してきた最強の賢者です。魔法とか使います。以上」
「……他は?」
「え、他? んー……あ、神力とか仙気ってのも使えます」
「……まあいいか。じゃあ次はそこの白髪」
視線を怪斗の方に向けた。
「俺かぁ。俺は御秡如怪斗、何万もの妖怪を支配してる。鎌倉か室町時代ぐらいに妻と心中して死んで現代に転生した」
「は!?」
おいおい、聞いてないぞ怪斗。お前もまさか転生してたのか……。
「二人揃って転生してんのかよ。まあいいや、じゃあ最後に、その空色髪の後ろにいる女」
これで自己紹介は終わりかと思ったのだが、彩羽さんが怪斗の後ろを指さした。
後ろに誰もいないはずなのに。
『すごいですね、なんでわかったんですか?』
「な、なんか声がするぞ?」
『さっきはごめんね、最上くん。カイくんご迷惑を……』
すると、怪斗の後ろから靄のようなものが現れ、それが人の形を作った。
藍色の髪を腰まで伸ばし、ぱっちりとした目は桃色。制服を着ていたが、髪には三日月マークが入った天冠をつけていた。
髪の先端が炎のようにゆらめいているし、幽霊なのだろうか……?
『だから言ってたじゃん! この人は多分違うって言ったのに!』
「ご、ごめんって
『そ・れ・に! あの時私を封じ込めて出れないようにまでして!!』
凄い勢いで怪斗の頰を突く幽霊(?)。
彩羽さんは物怖じせずに質問をする。
「んで、お前は誰で、ナニモンだ」
『あ、はいっ! ――
Vサインを作り、ドヤァっとした顔をしていた。
多分、
「テメェらの自己紹介も終わったし、アタシも行くか。アタシはまあさっきパトカーで言った通り、不知火彩羽でエリート警察官だ」
「自分でエリートって……」
「アタシは魔法とか妖術とかは使えない代わりに、〝
シナスタジア……共感覚ってやつだな。鋭い視覚で、本来見えないはずの色や、音などにも色が見えたりするやつか。
「これは生まれつきじゃねぇ。胸糞悪い秘密組織とやらに捕まって、その時に薬を飲んでこの能力が開花したんだ」
「秘密組織?」
「ああ、その秘密組織――『
そして、彩羽さんが服をぐいっとあげ、自分のお 左腹を見せてくる。そこには『0311』という刺青のようなものが入っていた。
「これが、アタシが被験体だったって証拠だ。忌々しい、あいつらの……」
ギリッと歯を鳴らしていた。
怪斗がラーメンを啜り終えると、彩羽さんに質問をしだす。
「それってさぁ、他の被験体の子とかいるんだろうけど、その子たちはどうなってんだ?」
「その子たちはまだ実験されてるだろうよ。アタシたちは、一人の悪魔によって脱出手助けをされて成功したんだ」
『で、でももう一人脱出できた人がいたんですね!』
「ああ」
三人の会話を聞きながら俺もラーメンをすする。
だが俺は、次に彩羽さんの発言で思わずラーメンが口から飛び出そうになった。
「もう一人の脱出者は〝九条静音〟だ」
「「『なッ!!?』」」
確かに、あいつの完全記憶能力は『生まれつき持ってた』なんて一言も言っていないしな……。
「この世界において能力は異端そのものだ。他の魔力やらは随分ルールを重んじているようだし」
「ルール?」
「そうだ。魔力は仙気に強く、妖力に弱い。仙気は魔力に弱く、妖力に強い。妖力は魔力に強く、仙気に弱い……と言った感じでな」
「三角形ができますね」
「あと他にも、霊力と神力は互いに強く、互いに弱い」
……じゃああの時、怪斗に仙気を使っていれば暴走せずにワンチャン勝てたのか……?
いや、でもまだ仙式は使えないしダメか……。
そんなことを思いながらラーメンを飲み干すと、マスターが馬鹿でかいパフェを作ってきてくれた。
「
「ちゃんと食ってから言え、汚ねぇぞ。……あとどこか、あいつに似てて癪に触るなぁ……」
「なんか理不尽じゃないですか……?」
パフェを食べ終えた後は、まったりと話をしながら時間が過ぎるのを感じていた。
「さて、夜も更けてきたことだし、テメェらクソガキは帰った帰った」
しっしっと手で払われた。
「帰れって……よくわかんない場所に連れてこられてはいさよならって感じですか……?」
「いいから一回そこのドア開けてみやがれ」
椅子から降り、ガチャリとドアを開けた。
「あれ、ここ……俺の家のすぐ近くの路地裏だ」
「ま、そーゆーこった。じゃなあガキども。何かあったらさっき渡した名刺に連絡しろよ」
口は悪いが、いい人だな。
ぺこりと会釈をして、俺たちはこの場を後にした。
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