第11話 妹と自己紹介
「やっぱり
「えへへ、お兄様の選んだ服ですから♪」
「アイドルになってもいい線行くんじゃないか?」
「早苗はお兄様だけのものですよ。他の殿方の視線に興味はありません!」
「それはそれで心配だが、兄としてこれ以上の幸せはないな」
そんな感じでイチャイチャする2人が
集合場所として指定していた駅前の広場に到着すると、先に来ていた3人がこっちこっちと手招きしてくれた。
「遅れてごめん」
「
「わ、私もさっき来たところです!」
「……同じく」
3人ともすごくいい子だ。10分以上またせたと言うのに、こうして笑顔で気を遣ってくれるのだから。
どこかの誰か……主に俺の右隣で「
そんなことを口に出したら殺されるので頭の中だけで思い浮かべていると、3人の視線が同時に俺の左隣に立つ人物へと向けられた。
「あの、そちらの方は誰ですか?」
「知り合いでは無いよね〜?」
「知らない。初めまして……?」
それぞれで首を傾げる彼女たちには、まだ早苗のことを伝えていない。
突然に決まったことで伝えるタイミングが分からなかったというのもあるし、3人も以前から妹の話はしていて会ってみたいと言ってくれていたのだ。
だから、今日はサプライズとして連れてきた
「…………」
「ほら、早苗」
「……」コク
自己紹介をした早苗を見た俺と希は、予想外の事実に思わず目を丸くした。
だって、自分に対してあれほどベタベタとしてくるような妹が。希に対して一歩も引かないほど自信満々だったはずの彼女が―――――――――。
「は、はははは初めましてぇぇぇ……」
―――――――ものすごく震えていたから。
もしかして寒いのだろうか。いや、それにしては春の陽気が心地いいお出かけ日和過ぎる。
自分の耳がおかしいのかとも思ったが、その場にいる全員がキョトンとしているところを見るに、やはり疑いようのない事実らしかった。
「早苗、お前って人見知りだったのか?」
「うぅ……」
「私に対してはあれだけ張り合ってくるくせに?!」
「希さんは平気なんですよぉ……」
確かにこの10年以上の間、俺は早苗が自分と会話をするシーンしか知り得なかった。何せ、1対1の通話だったからな。
そして帰ってきてからも希と普通……いや、少し変わってはいたが会話が出来ていたため、彼女が人見知りであると気付かなかったのである。
なるほど。人見知りな性格で人に囲まれ続ける研究所にいなきゃいけなかったんだもんな。そりゃ、ストレスが溜まって研究がストップしてもおかしくないか。
「そうだ、早苗。お兄ちゃんに自己紹介をしてみろ」
「お兄様に、ですか?」
「それなら出来そうか?」
「が、頑張ります……」
そう呟いた彼女は一度俺だけを見つめてほかのことを全て忘れるように意識すると、何度か深呼吸をしてからようやく口を開いた。そして。
「
駆け抜けるような早口で済まされた自己紹介に、普段から無口な
ついさっきまでオドオドしてたヤツのセリフにしては怖すぎるもんな。言葉のヒートショックを起こしちまうぞ。
「さ、早苗……?」
「はっ?! す、すみません……お兄様のことになると他のことを考えられなくて……」
「あはは……とにかく、俺の妹だから仲良くしてやってくれな。出来る限りでいいから」
「お、おけまる……」
「……わかった」
「りょ、了解ですぅ……」
人は第一印象で全てが決まるとはよく言うが、既にどこか引いた目で見てしまっている3人に、俺が失敗したなと頭を抱えたことは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます