第27話 メキシコシティ その2

 メキシコシティの首都、メキシコシティ。ティファナと比べれば、治安はいいのかなと思いますが。


 もともと麻薬カルテル同士の抗争が問題となっており、スリも結構出たり、ということで、油断のならない街ではあります。私の場合、常に友達と一緒に行動していたので、ほぼ危険は感じませんでしたが。


 麻薬組織同士の抗争で、敵対する組織への見せしめとして、捕まった組員が上半身を裸にされ、後ろ手に縛られた上で斧で首を落とされた、という事件のニュースを見て、私は肝が冷えました・・・。


 ただ、観光客が巻き込まれた、という事件はあまり聞かなかったので、ちゃんと注意してれば安全だと思います。(たぶん)


 観光二日目には、メキシコシティの市街地へ行くことに。マリアの自宅から駅まではバス移動。バスと言っても、日本のようなバスではなく、バンの運転席以外の部分を乗客用の座席に改造したようなもの。バスの中では陽気な音楽が流れていて、乗客もリズムをとっていたりするのです。さすがラテン系の国。思わず私もリズムをとってしまいました。


 最寄り駅の駅のプラットフォームはとても大きかった記憶があります。なお、電車の中には、「身の危険を感じたら引くレバーなるもの」があり、電車で事件に巻き込まれそうになったら、それを引け、と教わりました。


 おおう、そういう可能性もあるのね・・・?


 電車の解説をしてもらった流れで、私はマリアに日本の通勤ラッシュの話をすることに。


「日本の朝のラッシュはものすごくて、人と人の隙間がないの。こんな感じ(カエルのように窓に張り付くジェスチャー)で、足が浮くくらい詰め込まれるの」


「わあ、それは大変ねえ」


 驚くマリア。するとその話をニヤニヤしながら聞いていたホセが、いらぬ一言を。


「すげえな。じゃあうっかり、電車内でXXして、XXしちゃうことも・・・フゴッ」


 ホセを殴るマリア。苦笑いするルイス。


「いまのは訳さないでおくわ・・・このドアホが!」


 彼はスペイン語しか話せないので、私にはわかんないと思ってドシモネタを発したようなのですが。英語とスペイン語、ちょこちょこ似てる単語があるんですよね。例えばstudent(ステューデント) はestudiante(エステュデイアンテ)、station(ステーション)はestacion(エスタシオン) 。


 そしてたまたま彼が発したドシモネタ(スペイン語)が、私が聞き取れるたぐいのスペイン語だったのです。


「ごめん、マリア。わかっちゃった・・・」


 横海がシモネタのヒアリング能力があるということに気づいてから、ホセはあまり激しいのは言わなくなりましたw


 なお、何日目か忘れましたが、マリアが仕事に行くので、彼女の自宅にホセと二人きりで取り残されたことがありました。


 英語と初級スペイン語しかわからん私と、英語が全くわからないホセでは会話が通じるはずもなく。ただ、なんとかコミュニケーションを取ろうとする彼は、やっぱりとてもいい人でした。


 間が持たなくなったホセは「トルティージャを買いに行こう」と私を誘い、近場のトルティージャ屋さんにつれてってくれることに。

※スペイン語発音でtortilla(トルティージャ)は、日本で言う「トルティーヤ」のことです。とうもろこしの粉からできたペナペナのクレープの生地みたいなパンです。


 お店っぽい建物を想像していったのですが、住宅街を抜けて、たどり着いたのはブロック塀の壁。


「ん? コレがトルティージャ屋?」


「あそこが注文口だ。トルティージャ ポルファボールって言ってみな」


 よく見ると、コンクリ塀に小窓くらいの穴があいているのです。そこを覗くと、中にはトルティージャを焼く機械と、おばさまたちの姿が!


 想像もしていなかったメキシコの日常風景に感動し、おもわず片言のスペイン語で「写真をとってもいいですか」と聞いたのですが、おばさんたちは恥ずかしがって、写真撮影には応じてくれませんでした(残念)。


 持ってきたトルティージャ専用の容器に、おばさんたちはトルティージャを入れてくれました。この近所の人たちは、こんな感じでトルティージャを買っているらしいです。


 その他にも、住宅街には、お肉屋さんがあったり、ちょっとした屋台のようなレストランがあったり。そしてどのお店の人たちも、笑顔で手を降ってくれたのが印象的でした。


 普通に観光するんではなく、地元の人たちの生活を体験させてもらえたことは、とても素晴らしい経験だったなあと、今になって思います。





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