第9話 「LOVE WAY」 (公演当日)
18:00スタートだから10:00に寝ることにした。ベストコンディションで行きたかった。いつもの睡眠薬だから8時間は爆睡すると思う。革ジャンはいいのがなかったので黒のダウンにした。ブ―ツはどうするか悩んだが紐で足に結んだ。前日にメガネ屋にデモ機も取りに行ったので忘れ物はないと思う。バナナもポケットに入れた。
『Re:Birth』とは尾崎復活を意味したものではなく、亡くなった愛した人との再会を意味したものだったのかもしれない。おそらくは尾崎に会いたいという亡くなった方がファンの高齢化で年々増加し、このコンサートの開催となったのではないか?また会いたい人の当然なる多様性にも対応しようとしたのではないか……わからないがその点は神に問う。
僕は薬を飲んでベッドに潜り込んだ。人生で最高の3時間を過ごすために……薬が強くて余韻嫋々。
───────────────────
蒸し暑く、どんよりとした夕暮れくらいの明るさの中にいた。
周りを見ると、大勢の中にいた。ブ―ツは履いていた。と、あわてて顔を触った。メガネは付けている。「ほ!」落ち着き電源ボタンを押し、起動しているか確認した。瞳孔に連動してレンズがズ―ムし、遠くで光るサインが『Re:Birth』であることが見て取れた。
周りの群集は「シェリ―」をみんなで歌っていた。怖いくらいに真剣そのもので歌っていた。僕のメガネでは音が割れていたのでボリュームを下げた。録音機は耳に掛ける部分に付いており、録画、録音、補聴器を兼ねておりデジカメをメガネ型としたものだった。
これもメガネ屋の看板がメガネと補聴器を併記しているのを見て一つにすればいいじゃんと思ったのがキッカケだ。後は母が嫌がることなく使ってくれるのを望むだけだ。
「何を歌ってくれるのだろう?」知らない曲などない。群集といっしょに「遠い空」を歌っているときに膝がガクと折れたなと思った時から記憶がなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます