第5話 死にたい気持ち『尾崎文書3段』
ミュ―ジカル歌手が身を投げたと朝から世間がざわざわしている。
瞬間、ゴッドファーザー3のラストシーンが思い出された。主人公の愛娘が撃たれてスローで倒れていくシ―ンだ。主人公が築き上げた巨万の富も名誉も瞬時に意味を成さなくなる感じがした。そう悲しい感じがしたし、今もうつな気持ちが続いている。
私は双極性障害により1年6ヶ月以上、療養生活を余儀なくされた。その間、支えてくれたのは今の妻だ。私はうつに関する本ばかり読んでいた。私の病名は初めの10年間は「うつ」だがそれ以降は「双極性障害」に変わった。それほど精神疾患の判断は一流の医者でも難しいようだ。僕はどっちでもいいんだけれど……
人生に絶望した私は自殺することにした。
用意したのはウイスキー、処方薬30日分、トイレクリーナ―。ウイスキーで酔って処方薬をトイレクリーナ―で流し込むというものだった。実行しかけた……。と、妻が帰って来た。「なんばしよると!飲んだと?」凄い見幕で薬を撒き散らした。そのあとさんざん叱られたし、薬が致死量ではないことを知った。
「死にたい気持ち」を「死ぬ」へと昇華させなければなかなか死ねるものではないようだ。私なんか気が小さくて死ねずになんとか生きているようなものだ。何が幸いしているのかわからない。それでも「死にたい気持ち」はなくならない。
『尾崎文書3段』の存在を巷のうわさで知った。もう流れてる。受信者も知らないのに。嫌な時代だ……。
Dear クラクション達へ
こんにちは。
今日で3回目だね。少しは詳しく話せそうだよ。ただ話を聞いて辞退者が出ても仕方ないと思っている。99%安全だけどね!
選ばれた5万人にはコンサートが終わるまで死んでもらう。仮死状態ってやつだね。死んでもらわないと黄泉に来てもらうことができないんだ。つまりはあの世でコンサートをしようというわけだ。そしてコンサート後は現世に戻ってもらうわけだがコンサートの記憶は消去されてる。御免なさい。仮死状態になる場所は家のベットでいいよ。心配な方は病院を使うといいと思うよ。
僕とスタッフと皆様5万人だけの3時間のコンサート。来てください。待っています。
日時 : 2022.1.31 18:00~21:00
場所 : 黄泉
※上記の時間は安静に横になっていて下さい。カメラを含む一切の持ち込みは出来ません。
bye-bye
カレンダーに丸を付けて18:00~からと書いた。カメラの持込不可はわかるけどバナナ(結局、バナナは果物?おやつ?)はどうなんだろうか、ダメなんだろうか、と思ってしまった。
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