第4話 落とし穴
人生にはいくつもの落とし穴がある。大した苦労もせずにその穴に落ちることなく生きていく人もいる。一方でご丁寧に一回、一回
落ちて生きていく人もいる。残念ながら私は後者だ。
生き返ることができて前世の反省をして落とし穴に落ちない人生を歩めるかというと希望はするが僕には自信がない。どこかで他人が言うキチンとした人生というものがわからないし、正解があるのかもわからない。
例えば朝10:00前からパチンコ屋に並んでいる多くの人達がみんな不正解の人生を歩んでいると言い切れるのだろうか……みんなそんなに立派なの?そんなに自分の生き様に自信があるの?
間もなく次なる文書を受信した。
Dear ファンの皆様へ
お元気ですか?
尾崎です。やっと名乗ることができました。このお手紙は無作為に送っているわけではありません。厳選させていただいた5万人の方に送りしています。信じられないと思いますが私も同じです(笑)
不安に思っていることがたくさんありますが一番は僕は今も皆さんから愛されているのかな?ということです。僕の曲は好きだけど尾崎自体は嫌いと思う人がいるのでは?と心配しています。
次には日時、会場を伝えることが出来ると思います。なんだか小出しにしてごめんなさい。では次回まで、バイ
フレディは消えた。「ほっ」
メールを受け取った人が自分だけのものにできなかったことを責めることはできないだろう。
この事件はあらゆる分野で大々的に報じられた。特に1980年代に中学生、高校生だった尾崎世代の熱狂は凄まじいものがあった。
「チケットはどうすれば入手できるのか?」
「チケットはいくらなのか?いくらでも出す!」
目下、この2点に集中しつつあった。尾崎のコンタクトはメールだけでありチケットについて全く触れていないのは高額の転売を防いだものだと考えられた。
人気絶頂の1986年には、3500円のチケットがダフ屋により90000円まで値を上げていた。
騒ぎ立てたが結局、世間もメール受信者も尾崎文書(そういう名がついた)第3段が発信されるのを待つしかなかった。
尾崎のファンはいつも、いつまでも待たされる。
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