第3話
03
「
生命の起源、
なんて、そんな大層な話をするつもりはないよ
そんなふうに、崩していた足を畳まなければいけないような話を、
私はこれからしようというわけではない。
宇宙の始まりを語るつもりはないし、
惑星の始まりを語るつもりもない。
ん、ああ、
宇宙の始まりは、間違いなくビッグバンだよ。
何も無かった空間で、突然一つの物質が生まれて、ええと、
その物質が急激な膨張をはじめ、そうしてビッグバンが起こった、
みたいな話だったな。
——表では。
察するが早いか、こんなもの滅相も無い
ほとほと、大概にしてほしいものだ。
私からして、何かが存在しなければ、何かが生まれることは考えられないのだがね。
宇宙の始まる前、そこには確実に要因があったよ。
エキゾチック物質というものを聞いたことがあるかな。
あるいは、曰く、負の性質を持つ物質、
つまるところ、マイナスの性質を持つ物質だよ。
宇宙が始まる前、その何も無かったとされている空間には、有ったのさ。
その物質が。
無数にあった。無限にあった。
その物質の衝突こそが、ビッグバンの真理、だよ。
その真理こそが、今も宇宙が膨張している理由さ。
負のエネルギーを持った物質がどうして、衝突できたのか、
そんな事実をどうして、私が知っているのか、等々、
疑問は果たして尽きることはないと思うが、
解消は億劫で面倒で、大変だ。
まずはこちら側——裏側世界の量子力学から学ぶといい。
すると必然、宇宙の起源だって、その気になれば知ることができるだろう。
さて、そろそろ修正しようか。軌道と話を。
閑話休題だ。
命の起源を語るとしよう。
起源と言っても、どこから来たのかという話さ。
だから、足を畳むなと言っている
私は知ってほしいだけさ。
命の答えと、そして結論を。
さて、
命がどこから来ているかという話だが、
結論から言って、ここから来ている。
ここ——そう、裏側さ。
だから言ったじゃないか。
——輪廻転生。
行ったり来たり。
逝ったり生きたり。
転じて、還る。
輪廻転生。
表裏転生。
命というのは表と裏を行ったり来たりと、輪廻している。
ああ、裏から表への命の引継ぎはないよ。
だから転生さ。
転じて、生まれ変わるのさ。
たとえるなら、そうだな、——濾過、だろうか。
ほら、赤ちゃんというのは、綺麗な存在だろう。
ちなみに捕捉するが、人間は人間にしか転生しないよ。
当たり前じゃないか。
古代のインドや、その他の極一部では、人間以外の生き物に転生してしまうから、現前世では良い行いをしよう、
なんて考えがあったみたいだが、
その信仰の先には極楽浄土、その諸々がなかったということになる。
その先には——表に於ける死の先には裏があった。
唯、それだけ。
当たり前だろう。
表があれば裏がある。
そうしてまた、こちらから表へと転生する。
輪廻する。
サイクルだよ。
命のサイクル、あるいは輪廻。
そのサイクルの過程で、表側では絶対に辿り着けない領域がある。
表に於ける理を捨て、尚、理解が敵わない領域。
脳がその先を拒絶する。
死なんて概念が存在しなかったという事実に、
存在し得ない空虚な概念に生涯を縛られていたという真理を、
命が引き継がれた瞬間に——転生を果たした末に、
——輪廻と
——表裏と
——真理と。
客観的かつ達観的に、生命の輪廻を知覚し認識に及んだ刹那的瞬間、
脳は急激に、及び急加速を以てして進化を遂げる。
曰く死後の世界、
曰く別世界、
曰く、裏世界。
世界の表裏の弁別が果たされた瞬間に——
一生命の輪廻は初めて崩壊を果たす。
表裏が一体となる。
輪廻のお終り、つまりは転生しないということ。
表裏一体、つまりは、一生命の世界統合。
わかりやすく言えば永住さ。
裏世界に永住することが叶う。
表とは死を迎えるために存在し、
対して裏は、生活を送るために存在している。
表に生きる理由なんてない、なんて意地の悪いことを言うつもりはないよ。
唯、真理だ。
しかし、真理が常に世界にあるとは思わないでくれたまえ。
不変なんて存在は、物質からして許されていないのだから。
世界の内側に命があるのではなく、世界から独立した生がある。
故に、真理が真理だと証明を果たすのは、いつだって君だよ。
臥間 寧々。
君の名前さ。
名前だって無くしてしまった君に、
私から送る最初の真理。
君は
さて、君は、自らの証明は済んだかな。
」
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