第18話
朝から、霧雨が降る。コツコツと足音が路上に響く向かいから誰かの影が見える。身長すらも現時点では分からない。足音はどこか力強く、女性のヒールの音ではないと思われる。足音が近づく。街灯の下に影が来た時、その足音を響かせていたのは背の高い背広を着た男性だと認識する事が出来た。帽子を被っているシルクハットで目深に被ったそれで、表情を読み取ることは出来ない。足はすらりと長く、歩幅は意外と狭い。しかし目線は次第に腰の辺りの違和感に気付き止まる。彼は手に何かを持っている。腰に密着させるように、あるいは隠すように手に握られたそれは街灯の明かりに僅かに反射しその物を認識させた。
それはナイフだった。鈍色に光るナイフ。使い古されたナイフ。鋭利ではない、錆があり、もう使い物にならないのではないかと感じさせる古臭いナイフ。アンティークなナイフ。一瞬の思考でそれを右脳で考え、左脳で逃げろと指示が出され、次の瞬間、後ろを向いた僕は来た方角へと猛ダッシュで引き返した。
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