第19話・狙われた殿下
「きゃあああああっ」
それから数日後の下校時。
マリーザは、ジオヴァナに成りすましたシルヴィオと、教室を出たところで悲鳴を聞いた。聞き覚えのある声にお互い、顔を見合わせる。正直、またかと思いながら声がした昇降口へと向かえば、人だかりが出来ていた。
「どうしたの? 何があったの?」
「サロモネ男爵令嬢が足を踏み外したところに、殿下が居合わせて……」
「えっ? 殿下が……!」
近くにいた女生徒に詳細を聞くと、ジオヴァナが前に進み出た。殿下の許婚が彼女だと知る皆が道を空ける。マリーザも後に続いた。
「大丈夫ですか?」
「ああ……」
心配するジオヴァナに苦笑を浮かべる殿下。サンドリーノ殿下にメローネがしがみ付いていた。そこへマックスが駆けつけた。
「メローネ、大丈夫か?」
「マックス。大丈夫。サンドリーノさまが助けてくれたから」
「メローネ。殿下から離れなさい」
なかなか殿下から離れそうにない彼女を見かねてマリーザが言えば、彼女は顔を顰めた。
「痛い~。足を捻ったみたい~」
わざとらしい態度だ。どうしたものかと思えば、殿下が動いた。殿下はマックスを見た。
「きみ、マックスくんとかいったかな?」
「は、はい。殿下」
「悪いんだが、彼女を保健室まで運んで言ってくれないかな? どうも彼女を庇った際に腰を打ったみたいでね」
「分かりました。さっ、メローネ。殿下から離れて。殿下もお怪我をされている」
僕では彼女を運べないと言う殿下に、メローネは渋面を作った。彼女の計画では殿下に保健室に運んでもらう予定だったのだろう。マリーザは呆れるしかなかった。
マックスは殿下の言葉に、慌てて彼女を引き剥がした。
「さ、僕が保健室まで連れて行くから安心して」
「……ありがとう。マックス」
親切なマックスに対し、メローネは舌打ちする。その場をそそくさと去って行った二人を見て、周囲を取り囲んでいた人々も離れていった。
「お礼もなしか……」
ジオヴァナから男性の声が漏れた。シルヴィオの心情らしい。マリーザも同感だ。殿下を下敷きにしておいて「ありがとう」の一言もなく、抱き上げてくれたマックスだけに礼を言うなんて、メローネはどうかしている。
殿下はよろよろと立ち上がった。思わずマリーザは声をかけた。
「大丈夫ですか? 殿下」
「心配ない。腰も打ってないよ。あれはわざと私を見て階段を踏み外してきた」
「殿下を狙ったってことですか?」
何と罰当たりな。と、マリーザが思うと、殿下が言った。
「ここでは何だから、生徒会会長室で話をしよう」
この場では誰の目があるか分からないから、場を変えようと言いだした殿下に、マリーザとジオヴァナは速やかに従った。
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