第6話 ボール

 昼食を食べ、次は校歌指導だった。中学3年生の生徒会役員の人たちが声の大きさなどのアドバイスをしてくれた。そのおかげで、校歌が大きい声で歌えるようになったと思う。その後、クラス対抗でドッジボールをした。男子が前に出て、その後ろに女子がいるような構図だった。

 「今からドッジボールを始めます」

 始まりの笛が鳴った。今回のドッジボールは人数が多いため、ボールを二個使っていた。そのためか、どんどん内野の人数が減ってくる。しかし、ぼくのことを狙う人はいなかった。たぶん、弱そうなオーラが出ていたのだろう。ぼくは安心したため、コートにいた田内さん話しかけた。

 「田内さん」

 田内さんは、少し困った顔をしていた。

 「あ…ぼく、南野です。」

 田内さんの顔が少し緩んだ気がした。

 「南野くん、大丈夫?コートの中で立ち止まって話すの」

 「大丈夫!ぼくのところにはボールが来ないから!」

 少し疑っていたようだが、少し時間が経ってもボールが来ないため信じてくれたようだ。ぼくはドッジボールをしていることを忘れるくらい田内さんとの話が楽しかった。

 残り30秒

ぼくのところにボールが一つ転がってきた。味方の視線が僕に集まった。ぼくはボールを投げようとした。

 「ピー、試合終了」

ぼくはボールを投げるのを急にやめようとしたためか、前に倒れそうになったが、体幹が良かったためかギリギリ倒れなかった。

 試合の結果はA組4人、B組7人でぼくのクラスが勝った。負けたA組は腕立てを30回した。A組の生徒がB組の生徒にもう一度試合をしたいと頼んだことで先生がそれを許して二回戦が始まった。ぼくは一回戦と同じように田内さんと話していた。距離が縮まったような気がした。

 「ピー」

結果はA組6人、B組6人で引き分けだった。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る