第2話 緊張
「もう霧島さんの朝配信が始まる時間だ」
担当Vチューバーの配信で問題がないか確認したり、配信内でフォローを入れたりするのもマネージャーの仕事だ。霧島はマシュマロに投稿されているお悩みを解決していた。
「上司にそんなこと言われたなんて可愛そうだな。無理しなくていいんだぞ。逃げるってことは決して悪くないんだからな」
一つのお悩み相談をしていると、共感する者が多かったのか画面では青と緑のスパチャが飛び交う。その一つ一つに対してありがとうとお礼を言う霧島。山元も感心するほどだ。
「今日の晩は『マジクラ』配信だから『ゆいゆい』と一緒に建築するから。朝配信みんな来てくれてありがとう」
『マジクラ』は魔法で生み出した物質で様々な物を建築していくゲームである。そして、霧島は明日同じ事務所の猫耳キャラ『甘神 唯』とゲームをする予定があった。しかし、霧島は『マジクラ』は初配信で右も左も分からない状態。山元はこのままコラボ配信するのは大丈夫なのだろうか?と不安だった。
コラボ配信開始3時間前、霧島から電話がかかってきた。
「どうしたんですか?」
「唯さんとの『マジクラ』配信ちゃんとできるか自信がなくて。配信の前に山元さんと一緒に練習とかってできないだろうか?」
山元も『マジクラ』は齧ったことがあるので多少はできるので教えることはできるが、配信前に私が教えてしまっては初々しい霧島の姿を視聴者の方に見せることは叶わなくなると思い、
「唯さんやファンと協力して上手くなっていく姿を皆見たいと思ってるから、私が教えちゃったら皆が求める配信じゃなくなると思うの。だから頑張って唯さんと初プレイしたほうがいい配信になるはずよ」
初見ですることを勧めると、悩んでいるのか電話の向こうから霧島の唸り声が聞こえた。無理もない。今まで雑談中心でやってきた霧島にとって、不慣れなゲームで尚且つまだ唯とは配信外で会ったことがないため、上手く会話を繋げられるかどうか気にしているのだろう。
「分かった………頑張ってみるよ」
だが、山元の助言で霧島は覚悟を決めた。
「いってこい!配信終わったら今度喫茶店で奢ってあげる!」
「是非行かせてもらいます!」
説得し、無事配信へ送り出すことができた。
それから数時間が経ち、あと2分…………1分……30秒と配信開始までの時間を数えるほど山元も緊張していた。そしてその時がきた。
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