Vマネちゃん奮闘記

色塚京

第1話 わがまま

「今日『霧島』ちゃんのホラー配信あるらしいぞ!」

「おっ、まじか!」


 見るからにオタクである2人が1つのスマホをまじまじと見つめて共通の推しについて喋っている。

 話題となっているのは最近注目され始めた『ヒーリング』所属アイドルVチューバーの『霧島 美冬』についてだった。霧島 美冬は主にゲーム配信を中心として活動するクール系Vチューバーのことだ。霧島 美冬は相談配信をよくしていて、落ち着いたトーンで視聴者の相談を聞くスタイルが認められ、今少しずつ話題を呼んでいる。

 このVチューバー業界はまだまだ発展途上であり、注目され始めたとは言え、超大型のVチューバー事務所でも数人が登録者数10万人突破している状況だ。それでは収益化しても中々稼ぐことはできないだろう。そんなどう転ぶか分からない業界でVチューバーのマネージャーとして働くのがこの女性。


「またこんな配信スケジュール組んで………。この量は無茶って前回言ったはずなのに」


 オタク達の横を愚痴をこぼしながら送られたスケジュールを確認する女性。

 山元 夏見(27)独身。職業はVチューバーのマネージャー………なんて言っても怪しまれるからアイドルのマネージャーと言っている。決して嘘は言っていない。彼女達はああ見えてもアイドルなのだから。

 会議が終わり、自宅のアパートに帰る。そして、さっき送られたスケジュールを組み直し、『配信日減らしなさい』と可能な限り相手の要望に沿ったスケジュールを送る。


「『霧島さん』最近視聴者が増えて登録者数が1万人近くで嬉しいのは分かるけど、無茶しすぎ」


 会議に続き、スケジュール管理もあり疲れたので、椅子に全体重を乗せて、楽な体勢になる。一息ついたと思った瞬間、休むなと言わんばかりの速さでピコンッ!という通知音により目を覚ます。PCを見ると霧島から返信が来ていた。それを確認すると、送り返したスケジュールに対しての文句ばかり。


「もういいや。このままメールでやり取りしても埒があかないわ。今度喫茶店を餌にして配信スケジュールについて話し合おうかな」


こうして山元 夏見の1日は終わっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る