夜の星を見上げて歩こう
夜の星を見上げて歩こう 1
夜空を見上げて想うことがある。
昔の人々は、瞬く星を結びつけ、人間や動物などの姿に見立てて星座を作った。そのいくつかには神話と結びつけられた逸話が存在する。
例えばオリオン座。サソリに刺されて死んでしまう話もあるが、月と狩りの女神アルテミスに殺される話もある。兄にそそのかされたとはいえ、彼女は愛するオリオンを自分の手で射殺してしまうのだ。
例えばかんむり座。王女アリアドネが酒の神ディオニュソスに花嫁に迎られた時に送られた冠だと言われている。こうなったのはテーセウス王子がアリアドネを置き去りにしたからだ。テーセウス王子は、彼女を妻にするとわざわいが起こるから船出せよという夢を見て、妻に迎えた彼女を残して本当に船出してしまうのである。
最後にこと座。この星座にモチーフになった竪琴は、琴の名手オルフェウスのものだという。彼の琴の音色は冥土の王プルトーンの心を打ち、妻のエウリディケを冥界から連れ戻すことさえ許されたとされている。しかし、オルフェウスはエウリディケを冥界から連れ出す途中で、約束を破って振り向いてしまい、連れ帰ることができずに後に殺されてしまうのだ。
こうして考えると、星座の神話には、もの悲しい物語がいくつか存在する。夜空を見上げてみればこの世の悩みなんてちっぽけだ、とは言い切れない。
あるときは本を読んでいた。あるときはタバコをふかしていた。あるときは缶の中身を流し込んでいた。イヤフォンをしていたときもあれば、お風呂上がりなのか髪をドライヤーで乾かしているときもあった。
あの日、あのとき、彼女は何を想って夜空を見上げていたのだろうか……。
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