第11話:水着とナンパと俺
「うわ、凄い人だな……!! 」
「売店も大きいのがあるね!飲み物買う? 」
「ですね!体調不良防止にもなりますし」
「バナナボートあるじゃない!兄貴、引っ張りなさいよ! 」
「俺馬車馬前提!! 」
ショッピングモールとは目と鼻の先にあるプールへ着いて、着替えて少し。見るも眩しい譜さんと何だかんだ言って俺馬力で遊ぶ気満々のつむぎを伴って、俺はプールへと降り立った。
つむぎの馬車馬扱いに軽くツッコミを入れつつもやはり隣で燦然と輝く白い肌に俺の鼻の下は伸びっぱなしだ。
と、言うのに。
「ねえ彼女たち、2人? 」
「姉妹?それともお友達同士かな」
「こいつら……」
近くにいる俺をガン無視した譜さんとつむぎへの「馴れ馴れしく軽さカンストなナンパ」の嵐に、俺のムカつきは最高潮だった。
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「その水着、よく似合ってるじゃない! 」
「何か奢るよ、売店どう? 」
「ね、遊んだら何か食いに行かない?いい店知ってんだよね」
いや、俺居るんだけど。お前らの視界にいるよね?何?欲望馬鹿フィルターでもかかってんの?あまりのナンパの波状攻撃に口を出しかけたその時、ふにゅ、と言う感触が両腕にのしかかる。
「うっっさ!私はコイツと来てんだからあんた達なんか用無しよ!用・無・し!消えろダサ男! 」
「ごめんなさい、ヨル君以外に興味ないの」
「つむぎ……譜さん……!! 」
2人の発言に、ざわ、と失礼男どもがどよめいた。トドメとばかりに「そう言うことだ」と俺が言葉を落とすと、ブツクサと(主に俺にだろう)文句を言いつつも男どもはスゴスゴと引き下がって行く。わはは。どうだ、凄いだろう。俺の妹と彼女は。俺何もしてないけど。
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アホどもが散ったところで気を取り直して準備運動と洒落込んでいると、ぴと、と柔らかなものが俺の背にくっついた。
「ヨル君、柔軟体操?譜手伝うよ! 」
「ふぇ、ふぇへ!? 」
柔軟のお手伝い、と言うことは。この柔らかでいい匂いな感触の正体は、俺の肌に直に触れている、譜さんの柔肌……!
それはヤバい。ヤバすぎる。実を言うと吸血をされた事は何度かあれど、未だに手すら自分から繋げていないチキンな俺にはなにぶん刺激が強すぎた。思わず出る鼻血に、ぺろり、譜さんの舌が這う。
「えへ、ヨル君のぼせちゃった? 」
「……!! 」
「ああああああーーーっ!?何してんのよ泥棒猫!! 」
「グエェェッ!? 」
そんな状況に何を激昂したのか、つむぎが飛び跳ねて俺へと特攻して、悲鳴。俺たちの楽しい夏休み第一弾は、騒々しい中にこうして幕を開けた。
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