第10話:吸血系女子と水着







「つむぎちゃんつむぎちゃん、折角だから一緒に水着を見ましょう! 」

「うっさいわね!誰があんたなんかと! 」


 所変わって、バスで15分程のショッピングモール。混迷を極めた話題が近くにあるプールへ行く、と言う結論に落ち着いた事で、急遽水着を見繕いに来たのがここだった。


 譜さんの、水着。嬉しい想定外に鼻の下を伸ばしていると、くい、と服が引っ張られた。譜さんだ。


「ヨル君ってどんなのが好き……? 」

「え?譜さんが着てるならどれも素敵だと思うと言うか……! 」

「譜、嬉しい! 」

「ぐ……っう……負けないんだからああああああ!! 」




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「はあ……いよいよか……! 」


 現在地、1F催事場。又の名を水着売り場。丁度シーズンだからか大きくスペースを取られたそこから各々水着を数着手に取り、女性陣が試着室へ消えて少し。

 俺の心臓は、かつて無いほどにバクバクと脈打っていた。


「譜さんが持ってってたの、結構大胆だったな……!?つむぎも負けないわよ!とか言ってあんなの持ってって……。あああ、出てくるんだよな、緊張する……!! 」


 試着室前での大きな大きな独り言。怪しすぎると言うなかれ。こんな状況で冷静に待てる奴の方がおかしいのだ。そんな言い訳を周りに脳内で始めたところで、シャ、と言う音とともに試着室のカーテンが開いた。


「……!! 」

「ど、うかな? 」


 まず姿を現したのは、譜さんだ。

 大人っぽい黒地のビキニの上部は何やら悩ましい紐で固定され、背中はほぼ丸出し。それが豊かな白い胸をくい、と押し上げている。

 紐それ解けるんじゃ……?と期待したく、いや疑いたくなる下パーツと控え目なフリルと相まって、天元突破の色っぽさを醸し出していた。


「す、ごくいいと思います……!! 」

「あ、ありがとう…! 」


 もうひとつ気になってるのがあるからちょっと待っててね。そう言う譜さんに、夢見心地で頷く。あれが、あの女神が俺の彼女か。

 そんな今更ながら改めて実感した事実を噛みしめていると、今度は反対側の試着室のカーテンが開いた。今度は、つむぎだ。


「童貞君、ちゃあんと目に焼き付けなさいよね? 」

「だからお前はそう言うのをどこで覚えて来るんだよ」


 ふんだんにフリルがあしらわれた白いビキニに身を包んだつむぎがふん!と鼻を鳴らす。

 慎ましい胸を包む部分に淡いピンクの縁取りとラベンダー色の小花が散りばめられたそれは確かにつむぎによく似合っていた。ので一応隠さず褒めておく。


「いいじゃないか。可愛い可愛い。こんなに立派に育って兄ちゃん嬉しいぞ」

「へ、う……ば、馬鹿!! 」

「ええ!? 」




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 そんなこんなで小一時間。

 譜さんは他に白の清楚なワンピース、つむぎがそんなんよく見つけたなと言いたくなる様なギリギリビキニを試着したのだが、前者は1つ目の方が気に入ったと言うことで。後者は俺が必死こいて止めて結局どちらも1着目で決定と相成った。


 残すは、プールへ行くのみだ。自分のは適当に掴んで決め、俺は上昇する気分を隠しもせず勇んでプールへ向かうべく足を進めた。






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