第4話:部屋と吸血と俺







「え? 」

 するって何を?ナニを……?


 下品破廉恥と言うなかれ。年頃の男が彼女に「したい」とねだられて真っ先に想像するのはソレである。


 しかし、こんな誰にバレるかわからない場所で、スリリングに……!?ごくり。喉を鳴らした所で、眉をハの字に下げた譜さんが口を開いた。


「譜、血が欲しいなあって……」

「え、あ?吸血!そっちの方でしたか!! 」

「??……あっ! 」


 自分の言葉を反芻したのか、それとも俺の反応のせいか。こちらの勘違いに気がついたらしい譜さんが、白い頬をかあっと赤らめる。


「ご、ごめんなさい!分かりにくかったよね」

「いえいえそんな! 」

「でも」


 ヨル君なら、いいよ。

 謝罪に続いてこそりと囁かれた言葉に、今度は俺の方が茹で上がった。




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「じゃあ、貰うね」

「はい、どうぞ遠慮なく! 」


 時間は午後1時と言ったところだろうか。無駄に大きい窓から差し込む陽光を背に、譜さんが俺へ跨った。


 いくら無人のサークルスペースと言えど、他サークルとの仕切りは薄っぺらな仕切り一枚きり。

 現に隣のスペースから談笑の声が聞こえている状況で、これである。

(この状態で興奮するなって方が無理な気がする……!! )




 見下ろす譜さんの赤い瞳は熱っぽく、血への期待からかじんわりと上気する頰が艶かしくて。俺は再度ごくりと息を呑んだ。


 そうしている間に、髪を耳にかける仕草をした譜さんの体が傾き、近く。

 吐息が、熱い。

 談笑が、遠くなる。そして――


 刹那、感じた甘い匂いと首元の微かな痛みに、俺は意識を手放した。




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「……うー…ん?? 」

「あ、起きた!お早う、ヨル君」

「お、早うございます……? 」


 え、俺、いつの間に寝た?今何時?間抜けに回る頭で考えて、一瞬。頭に感じた温もりに、俺はたまらず飛び起きた。


「譜さん!?ななな何して」

「え?膝枕だよ? 」


 だって恋人でしょ?とでも言いたげな譜さんを一目見る。わ、生脚。

 

「講義ならまだ時間あるから大丈夫。ね、良かったらもう少しお話ししよ? 」

「は、はい……? 」

 

 返答、了承。そうしている間に膝へと頭を戻された。

 いや、なんで。言う間も無く当然のように極上の枕をあてがわれた俺は、仕方なしに大人しく幸せを享受した。行っておくが、不可抗力である。


「ヨル君急に落ちちゃうんだもん。譜びっくりしりゃった」

「すみません!何だか噛まれたところが気持ちよく、なって……? 」


 譜さんの言葉に、早速応えを返す。すると、俺の答えに譜さんがにこりと微笑んだ。


「そうなの?じゃあ、譜達夜の相性も凄くいいのね!譜嬉しい! 」

「ブッフェ!? 」




 


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