#08−1 ヴェロニカに鬼嫉妬の聖夜
なんだか、今日はいつも以上にテンション高くて、ヴェロニカの機嫌がいいな。
ん。また小指を
「これは?」
「うん……なんだかこうしていると落ち着くの」
「……いいのか? だって、ヴェロニーの好きな人って……」
「ふふ。相変わらず鈍いなぁ〜〜〜ハル君は。小学生のときから何も変わってないもん」
「それって俺が成長していないってことだよな?」
「そうかもねっ♪」
「ひ、ひどい言われようだ。確かに今でもバカだし、救いようがないけどさ」
「違うよ。ハル君は良い意味で染まってないの」
「意味分かんねえな」
しかし、どんよりとした空だな〜〜〜。雨は止んだけど、また降ってきそうだし。
ところで。
「どこにいきたいんだ? どこもすげえ混みようだけど」
「ハル君と一緒ならどこでもいいんだけど。うーん。普段行けないトコ」
「……どこだろうな。すまん。全然思いつかん」
「じゃあ。あのね……テーマパーク行きたい」
「ああ。うんうん。テーマパークね。って激混みじゃね?」
「……行ったことないの。ほら、家族とかだと行くんでしょ? クリスマスにレズニーランドとか」
うんうん。行く行く。
行く?
行くのか?
マジで行くか?
クリスマスに家族で?
我が家なんて、クリスマスはケーキを適当にスーパーで買ってきて、チキンはコンビニのだったし。妹は、レズニーランドに行きたいって騒いでいたけど、連れて行って貰えなかったな。
萌々香と付き合っていたときは……行けなかった。機会を逃したんだよな。
付き合った当初は時間が合わなくて行けずに、その後、萌々香が人気声優になってからは目立つ場所には行けなかった。
大学のときに行ったっきりだ。誰とって……レズニーオタク(男)とだよ。どうしても一人で行けないからって。
「そ、そうかもな……よし、行こう」
「ほんとっ!? ほんとにいいの?」
「ああ。ヴェロニーには世話になっているし、今日もヴェロニー達のお陰でケーキ早く売れたしな。ああ、閉園まで遊び倒してやろうぜ」
「やったぁぁぁッ!! ハル君大好きッ!!」
だから、くっつくな。離れろ。顔を俺の肩に密着させるな……。
うぅぅぅぅ。
「だが、ソー」
「そー?」
「シャァァァル」
「しゃるしゃる?」
「ディスタァァァァァァァァァンスッッ!!」
「いいからいいから。デートごっこするんでしょ」
強引に手を引くなぁぁ。ヴェロニー、ハイテンション過ぎるぞ。
ってことで、電車を乗り継いで、やってきました千葉の東京。
夢の世界。
東京レズニーシー。
ランドじゃないんかーいっ!!
って、これはヴェロニカの希望。
なんでも施設にいる時に、よく魚が主人公のレズニーアニメを見ていたらしく、そのアトラクションがあると知って急遽変更。
俺は観ていないから分からないけど、なんだか家族愛がすごいらしい。
「な、なんだこれ。なんだ、このイルミ……や、やば、やばいぞヴェロニー」
「こ、ここが噂の……ってカップルばっかじゃないかーいっ!!」
「ま、待て。チケットは買った。手荷物検査はした。中に入った」
「う、うん。ヴェロニーちゃん……ちょっと感動してます」
「……そ、そんなにか?」
「だって、今まで来たことないし。こんな、想像を絶する場所だったとは……」
とにかく、夕方のマジックアワー時間帯なのに明るい。うん、なんていうか異国
「ハル君……あ、あそこ行ってみたい」
「ん……なんだあの高いビルディングは。しかも建築的におかしくないか?」
テラーオブビル。な、なんて適当な建築なんだ……。
なんで高層階の面積が広いんだ? ドット画のキノコじゃないか!
それと近づくにつれて悲鳴が聞こえるんだが?
「こ、これ乗りたい……だって、上まで行けば、夜景が一望できるんでしょッ!! 行きたい行きたい行きたーーいっ」
「わ、分かった。なんだか雰囲気に圧倒されて、俺、吐きそうだわ……」
すげえ並ぶらしく、キャストのお姉さんがファストパスっていうのを教えてくれた。奇跡的にまだ発券しているとか。要は予約券ってことだな。発券されたチケットに書かれた時間に来ればそんなに並ばずに乗れるやつ。
夕方になると予約時間が全て埋まり、発券終了しちゃうような人気アトラクションらしい。
よく分からんけど、もう言われるがまま。
で、魚のやつ。
魚のキャラのアトラクションに行ったら、すぐに乗れた。
なんだか、魚になりきって海を進むんだけど割と感動した。はじめ、映画かと思ったけど座席が激しく動いてマジで没入感。すげえ。すげえけど……酔うな。
「うぅ……ハル君……」
「な、どうした? 酔ったか?」
アトラクションから出た瞬間、ヴェロニー大号泣。
「すごく良かったぁ。最後、みんなにバイバイって言われたとき、本当に感動しちゃった。だって、アレが家族だよね」
「そ、そうなのか。まあ、感動はしたが」
その後、もう一度乗りたいと言われて、再び並ぶことに。2回目も大号泣。
で、なんだか色々なアトラクションに乗って。それも相当待ち時間あったけど、ヴェロニーと話していたらあっという間だったな。
それに、普段話さないようなこともいっぱい話した。
小学校時代の二人の思い出とか。
俺のバイトの笑い話とか。
P・ライオットの配信爆笑裏話とか。
その時間も貴重だった。
うん、すげえ楽しかった。
——こんな子が俺の彼女だったらいいのに。
本気でそう思った……。すげえ悔しいの。
だって、俺みたいな中途半端なやつじゃ絶対に手が届かないし。
第一、俺なんかじゃヴェロニカ可哀そうだ。
そんなこと考えていたら……将来、ヴェロニー……いや、美羽と結ばれる奴が羨ましくなって。
そいつに嫉妬。激嫉妬。
……鬼嫉妬。
……切ない。
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