#Interlude01 * 白井萌々香の素性
あの、くそオンナぁッ!!!
あたしを誰だと思ってんのよ。この
ギルティィィィィッ!!
あたしの男……ハル君に我が物顔で触りやがって。ハル君嫌がっているじゃないの。
少しくらい顔とスタイルがいいからって何よッ!! あたしの足元にも及ばないくせに。
「萌々香、行くぞ。クソッ!! 踏まれるし、ケーキまみれになるし。金は取られるし。散々だな。だいたいてめえが引っ張るからだろうが」
「ご、ごめんなさい!! あたし、ドジで……」
使えねえ男だよ。
てめえなんか仕事ができなきゃただのゴミ男だろうが。
当然、プロダクションを作れって言ったのはあたしだけど、ゴミのような声優ばっかり集めてどうすんのよ。
とくに、あの
あの反抗的な目がいけ好かない。
あれでトップアイドル声優っていうんだから、日本終わってる。
「
「……う、うん。ごめん」
言われなくてもハル君はあたしの元に戻ってくるでしょうがッ!!
第一、ハル君はあたしのモノ。
なんであんな泥棒猫にやらなくちゃいけないのよ。
まさか、あたしからNTRしようってわけ?
——笑止ッ!!
あたしが世界で一番嫌いなモノは——人のものを横取りする女よ。
そう、てめえだよヴェロニカ。
ハル君が好きだっていうから調子合わせていたけど、あんなクソVtuberユニットなんて
「おい、ヴェロニーの情報だけでもいいから手に入れろよ」
「う、うん。ごめんね。ちゃんとするからお、お願い……痛いのはイヤなの」
付き合ってやってるだけ感謝しろよ。この下手くそ男が。
お前じゃ無理〜〜〜まず無理〜〜〜♪
ばーかばーかッ!!
あのヴェロニカとかいう女はお前の二枚も三枚も上手だよ。
そのくせ、このクズ男はすぐに主導権を握りたがる。
握らせておけば、思いのままだけどな。
ああ、アホくさ。
「おい、なんか臭くねえか?」
「……た、確かに。え? 隆介くん? コートのポケットから何か染みてない?」
「……うおッ、な、なんだこれ」
「カード? なんのカード? この前の名刺に似ているけど」
この前の名刺が残っていたってこと?
こいつ、同じ手に二回も引っかかってバカなのかな?
バカなんだよね?
バカすぎ。
死ねッ!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ!!
「こ、このコート……30万もするのに」
「え。大変じゃん……」
ポケットから染みて、すでに右下が真っ茶色なんだけど。っていうか似合う〜〜〜汚物色。
お前は今日から、
汚えやつ。
30万のコートなんて安いじゃねえか。みみっちい男だよ。
「おい、萌々香ッ!! あそこでまだ話してるヴェロニカに
「む、無理だよ。それに、あたし、今からハル君を誘いに行くのに、そんなことしたら嫌われちゃうじゃん」
根性なしが。てめえでいけよ。クズ。
「……ま、まあ。僕は寛容な男だから? これくらい? なんとも思わないけどな? それに、将来の嫁だし?
怒ってんじゃん。ていうか、自業自得じゃん。
あたしは止めておけって言ったのに。
ああ、みっともない。そんな立て看板蹴っちゃって。あ〜〜あ。看板倒れて——え?
停めてあった自転車が倒れて、横の自転車も倒れ……路駐のベンツにコツンって……ああ、嫌な予感。この男、本当にいつもやらかすからなぁ。
「おい、兄ちゃん。てめえわざとだよな? 埋めんぞ?」
……は?
この前のチンピラじゃない……? マジで? なんで登場するかな。
偶然にもほどがある……。
「ああん? てめえ、俺を誰……あっ!」
「おい、あのときの野郎じゃねえか。てめえ、またシバかれてぇのかッ!?」
さて、あたしは退散するか……。
「おい、てめえもだよ。ネエちゃん」
ちょ、ちょっと、コートの
「相変わらず臭えな。なんか髪の毛にケーキついてんぞ?」
「……さ、さっきケーキ屋の前で」
「おうおう。そのケーキ屋ってそこの店か?」
「は、はい。ケーキを売っている奴が、ムカつく野郎でして。ちょっと……冷やかしてやろうかと」
「ほう。面白いな。話せ」
「ほんとですかっ!? あいつ、女を使ってケーキ売ってやがって……完売したことがムカついて」
「……ほう。それで俺の愛車に傷つけたと? ちなみに佐藤さんの店のことだろ? てめえが言っているのはよぉ……?」
「ひぇ? さ、佐藤さんって誰ですか……?」
「そこのケーキ屋の店長だよ。高校のときの先輩でな。よくしてもらったんだよ。てめえ佐藤さんに因縁つけてんじゃねえぞ。ちょっと事務所まで来いや……」
さて、あたしは無関係だし。
ハル君とイブデートしなきゃだし。今日こそ勝負賭けるんだから。
「りゅ、隆介くん……あたしハル君のとこ——」
「ネエちゃんもだよ。まさか彼氏を置いて逃げる気じゃねえだろうな?」
「萌々香、お前、僕を見捨てるのか?」
「ち、違うよッ! ただ、あたしは……」
「おい、乗れや」
こうなったら、逃げる……。相手してる場合じゃないよ。
「こ、こら、逃げるなぁ〜〜〜」
「も、萌々香〜〜〜僕を見捨てないでくれぇぇ」
はぁはぁ。ここまで来れば大丈夫だ。
「ん、あれって、確か」
ヴェロニカと一緒にケーキ売りをしていた女二人……まさかっ!!!
間違いない、シナモン・エンデューロとチョコレート・ヴァーミリオンだ。
Vtuberのキャラにそっくりだし、間違いない。
「リオン姉、ハルさんとヴェロ姉さんどこに行くのでしょうね?」
「再会してはじめてのクリスマスだろう。見当も付かないが、思い出を残せるといいな。姉さんの言うように、はやく結ばれたほうがいいのにな」
「……ハルさんはなかなか難しいかもです」
「そうなのか? ヴェロニカにぞっこんなのかと思ったが」
「とんでもない。ヴェロ姉さんのことを大切に思うあまり、自分では幸せにできないって思って、引っ込み
「……なるほどな。よし、正月はハル殿も交えて飲むか!!」
「それ……まったく意味が分からないのですが」
なんの話をしているんだ?
「あ、こんにちは〜〜〜萌々香です〜〜〜」
「……リオン姉、わたし怖いです〜〜〜」
「無視だ、無視。この女の目は
「ちょ、ちょっと、あたしそんなみんなが思うような女じゃないのに。ちょっとお話だけでもどうですか〜〜?」
「……ひっ! か、顔を
「こいつは、底なしの精神力かもしれない。だが、その力の源はイカれた魂から来ているのだろうな。関わるな」
「……ちょ、ちょっと。あたし、絶対に普通なんですよ? 皆さんが思っているよりも清らかな魂していますし」
「ハ、ハルさんはどうやって付き合っていたんでしょう……わたしには恐怖でしかないです」
「し、失礼な。だからあたしはまともだって。それよりもハル君がどこに行ったのか知らない?」
「……ま、まだハルさんを……や、ヤバい人じゃないですか……うぅ、ハルさんのことは話せませんッ!!」
「知っていてもお前には教えるわけにいかないな。早々に立ち去れ」
感じ悪ッ!!
こっちが下手に出ていれば調子に乗りやがって。
酷い目に
そうね。まずはシナモンを
このロリっ子はどんな声で泣くのかな……。
ヴァーミリオンはそうね。縛り上げてあたしがたっぷりとお仕置きしてやらなくちゃ。責めて責めて責めまくって、耳元で囁くの。
一生このまま解放してあげないから♪ って。
「お願い……きっとハル君は今頃、あたしを探していると思うの」
「「それはない」」
なによ……この前も部屋に行ったとき、あたしを見て我慢しているみたいだったし。絶対にあたしのことを忘れてなんていないと思う。
むしろ、あたしが押し倒せば良かったのに。戦略をミスったわ。
だけど、まだ遅くないでしょ?
いくらでも
だって、ハル君とあたしの魂はがっちりと結ばれているから。
それに今日はクリスマスイブ。聖夜っていうスペシャル感がスパイスされているんだから、ここでハル君を襲って犯して取り戻してやる。
そう。純情ぶって、
「じゃあ、ハル君の家の前で待つからいい。必ず家には帰ってくるでしょ」
「……無駄なことを」
「リオン姉……ごにょごにょ」
「ああ、なるほどな」
なにを耳打ちしているのかしら。まあ、いいわ。厚着をしてきたし。
クリスマスイブと言えど、夜には帰ってくるでしょ。
それなら、あたしの勝ちね。
寒そうにして、不幸な女を演じればハル君は必ずあたしを……。
あたしは不幸な女。
クズ島クズ助に脅されて、うまく使われて、ボロボロになるまで責められて。
それで逃げてきた、不幸のどん底から救いの手を求める可哀そうな白井萌々香よ。
そこから始まるの。
興奮と快楽、少しだけ
必ず取り戻してやる。
ハル君はあたしが養ってあげる。だから、就職なんてしなくていいの。あたしは、不幸なハル君が好き。どん底で
だって、泣きそうなハル君が可愛くて、
来年も就活は邪魔してみせるから。
ふふふ。
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