第18話 【アラン側のお話】


 ジャスティスからの糾弾を逃れるため、僕はギルドの出口に向かって走った。

 しかし、ギルドの外へ一歩でると、そこには待ち伏せたように――。


「うわぁ……!?」


 なんと巨大なドラゴンがいたのだった。

 僕が倒したドラゴンよりもずっと強そうだ……。

 体も大きいし、なにより威圧感がすごい。

 もしかして僕が倒したドラゴンはまがい物だったのか!?

 このドラゴン相手に戦えるかどうかは微妙だ……。

 なにかとても強力な力でパワーアップされているんじゃないかというくらい、そのドラゴンはけた違いに強そうだった。

 まさか……ジャスティスし使役されているのか!?

 そんなことを考えて、僕が怖気づいていると……。

 ドラゴンの陰から、見知った顔が現れた。


「さあ、覚悟しなさい!」

「逃がしませんよ!」

「…………!?」


 それはマチルダとユリシィだった。

 もちろん僕の正体に気が付いているわけではなさそうだが。

 ジャスティスと一緒に、僕を挟み撃ちにするつもりか……!

 僕は慌てて、ギルドの中に戻る。

 あのドラゴンに加えて、勇者パーティーの二人を相手にするのは分が悪い。

 しかし、ギルドの中に戻っても、そこにはジャスティスがいた。

 ジャスティスは僕のことを捕まえようと、にじり寄る。


「観念しろ……!」

「っく…………」


 僕は挟み込まれてしまったようだ……。

 こうなったら、どちらかとは戦わないといけないかもしれない。

 僕は覚悟を決めた。

 もともと、ジャスティスたちとは対立するつもりだったのだ。

 それが少し早くなっただけのこと……。

 本当は僕の名声を高めて復讐をするつもりだったけど、こうなったら仕方がない。

 直接の対決で、僕の力を見せつけてやるんだ。


 実際に戦うとなると……そうだな……。

 ギルドの外へいくと、ドラゴンもいるから不利だ。

 それだったら、ジャスティスと一対一で戦うほうがいいだろう。

 今のジャスティスは、きっとかなり無力なはずだ。

 なにせ、世界最強の剣である、勇者の剣を僕が持っているのだから……!

 ジャスティスなんて、本当の力は大したことないんだ。

 だって僕でさえ、この剣を使えばかなり強くなるんだからさ。

 今のジャスティスは、僕に剣を奪われたから、どうせろくな剣を持っていないはずだ。

 まだあれからさほど時間はたっていないし、せいぜい店売りの剣くらいなものだろう。

 僕が勝つに決まっていた。

 ジャスティスには微塵も勝ち目なんてないはずだ。

 ここはスパッとジャスティスを一刀両断し、ギルドの裏口から逃げよう。


「うおおおおおおおおおお!!!!」


 僕は勇者の剣を抜いて、ジャスティスに斬りかかった!


「…………!?」


 ふっふっふ……ジャスティスは驚いているようだ。

 そりゃあそうだ。

 奪われたはずの勇者の剣を見たら、驚くに決まっている。

 まあ、これで僕の正体はばれたかな……?

 それでも、ちょうどいいかな。

 僕の作戦は失敗だったわけだし、もうこうなったらなるようになれだ。

 ジャスティスを殺せば、あとの二人も、僕を追放したことが間違いだったと気づくだろう。

 勇者より強いんだから、僕が次の勇者なんだよ!


 はっはっは……ジャスティス……!

 僕が勇者の剣を持っていることに、絶望するがいいさ!

 ジャスティス本人が、この剣の力を一番よくわかっているだろうからね。

 ああ……あの憎いジャスティスを、彼の剣で殺せるなんて……!

 因果応報だよ……!

 ざまぁみろジャスティス……!

 僕を馬鹿にしたせいだ……!


 僕は剣を振りながら、すでに勝ちを確信していた。

 なんたって僕は覚醒して、かなり強くなっている。

 そして剣の性能でも、僕が圧倒しているんだ。

 ジャスティスはいまだ剣を抜いていない。

 馬鹿め……油断したな……!

 やはり最後に神は僕に微笑むみたいだ。


「消えろおおおおおおおおおお!!!!」


 僕はジャスティスに、最大限の憎しみを込めて剣を――。

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