第10話 【アラン側のお話】


「はぁ……はぁ……」


 僕は路地裏を上手く活用して、逃げ回っていた。

 どうやらジャスティスたちは僕のことを通報したらしい。

 そんな……ジャスティスめ、僕を罠にかけたのだ。

 絶対に許せないけど……今はそれどころじゃないよね。


 実際に起こったこととしては、僕のほうが圧倒的に不利な状況だ。

 たとえジャスティスがなにかを企んでいたとしても、そんなこと、いい訳にならない。

 僕はいつかジャスティスの闇を暴いて、復讐してやろうと考えていた。

 だけど、それより先に、今はとりあえずこの状況を切り抜けないとな……。


「そうだ、ジャスティスの剣がある……!」


 僕のアイテムボックスの中には、各種レアアイテムと、それから、ジャスティス愛用の勇者の剣が入っていた。

 そういえば、ジャスティスが勇者として今のような力を手にしたのも、この剣を手に入れてからだった。

 だから、僕がこの剣を使えば、僕もジャスティスなみに戦えるようになるのかもしれない。

 普段の僕なら、そんな人のものを盗むようなことは考えないけれど……。

 今回はピンチな状況だから、このくらいいいよね。

 それに、ジャスティスのせいでこうなってるんだし……使えるものは使わないと。

 僕はこの勇者の剣で、ジャスティスに復讐するんだ。


「ふふふ……!」


 僕はアイテムボックスから勇者の剣を取り出して、それをニヤニヤと眺めていた。

 なんだか不思議と、力が湧いてきた気がするな……。

 今の僕なら、なんでもできてしまうような気がするぞ……!


「あ、いたぞ……! そこだ……!」

「捕まえろ……!」


 すると、衛兵たちが僕のことを発見して、近づいてきた。

 だけど、僕はもう逃げない。

 今の僕は、あの勇者の剣を持っているんだ。

 それに、バフや回復のアイテムも使い放題!


「うおおおおおおおおおおお!!!!」

「うわ……!?」


 ――ズシャァ!!!!


 僕は一瞬で、衛兵二人の首をはねとばした。


「すごい……! これが勇者の剣の力か……! まるで勝手に身体が動いたような……! はは! なんだ、ジャスティスも大したことないじゃないか。剣がこれだけ強ければ、僕だって……!」


 僕は心の中に、なにかが目覚めていくのを感じていた。

 そうか、これが勇者の力の目覚めか……!

 きっとジャスティスも同じ思いを感じていたんだろうな……。

 じゃあ、ジャスティスにはもともと、勇者の力なんてなかったってことか!?

 僕が使っても、これだけ剣の性能を引き出せるんだったら……僕が勇者でもいいじゃないか!


 ああ……どうしてもっと早くに気がつかなかったんだろうか。

 こんなことならさっさと、勇者の剣をジャスティスから奪っておけばよかった。

 今までは、預かるだけ預かって、僕一人のときは一切勇者の剣を出さなかったからな……。

 もったいないことをしていた……。

 この世界は奪うか、奪われるかの世界だ。


 僕は今まで、この気弱な性格のせいで、ジャスティスにいろんなものを搾取されてきたんだ。

 女の子や、武器や、地位や名誉――。

 でも、それも今日で終わりだ。


「欲しいなら、奪い取ればいいんだ……!」


 僕はニヤリと笑みを浮かべる。

 どうしてこんな単純なことに気がつかなかったんだろうか。

 この剣が、僕にすべてを教えてくれた気がする。

 ずるいじゃないかジャスティス……こんないい剣に導かれていたなんて……。


「はっはっは……! でも、きっと僕のほうがこの剣を上手く使いこなす! 僕こそが……真の勇者なんだ……!」





 ――アラン・ドランのカルマ値が、大幅に減少しました。





「うーん……おっそろしいことになっとるのう……」


 豹変するアランのことを、悩ましい顔で眺める神と天使。

 もはや原作とはかけ離れた展開に、神も困惑し始めていた。


「どういうことなんです……!? 神様……! あのアランが、人殺しを……!」


 天使は状況を飲み込めていないようだ。

 天使の目からすると、さっきまでのアランの性格から考えて、彼がこんなことをするとはどうしても思えないのだった。


「そうじゃなぁ……原因は、あの剣にある」

「あの剣……ジャスティスが持っていた、勇者の剣ですか……!?」


「そうじゃ、あれは勇者の剣として偽装されておるが……実際は【邪剣ヲズワルド】なのじゃ」

「【邪剣ヲズワルド】……!?」


 まさかの事実に、天使は驚く。

 神は説明を続けた。


「原作の小説ではな、アランはヒロインのラフィアと出会い、真の勇者の力に覚醒するはずじゃった……」

「ですね……でも、ラフィアは先に、ジャスティスと出会ってしまっている……」


「そうじゃ。本来なら、ラフィアによって、【邪剣ヲズワルド】の正体が見破られ、アランは邪剣に飲まれずに済んだのじゃ……。それどころか、ラフィアの能力によって、邪剣を浄化し、聖剣として、二刀流の剣士になるはずじゃったのじゃ……」

「なんと……! っていうことは……」


「そうじゃ。ラフィアと出会えなかったせいで、邪剣だけが、アランの手元に残り……そのまま邪剣に飲まれてしまったということじゃの……。まあ、邪剣はその人物の元々持っている悪い部分を引き出すものじゃから、これもアランの本性ではあるのじゃが……」

「ということは……もともとのジャスティスも、邪剣に飲まれていただけっていうことですか……?」


「いや、そうとも限らん。ジャスティスは普通の悪人に輪をかけて畜生な性格をしておるからの……。邪剣と組んだときの能力はすさまじいのも事実じゃが……邪剣のないジャスティスも、そうとうのクズじゃ。戦闘力が低下したクズになるだけじゃよ……原作ではな」

「なるほど……でも、今回はそのジャスティスの性格自体が変わっている……」


「そうじゃな……じゃから、この先ジャスティスがどうなるかは……わしにもわからん……」

「って……神様……そんな楽しそうな顔しないでくださいよ……。報告書を書くの、私の仕事なんですからね……」

「ホッホッホ……」


 今日も神はご機嫌でジャスティスとアランのことを観察しているのだった。



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