第8話 見本作り(?)

午前7時。


僕は荷物諸々の整理をした上で、家を出た。鴻は今日は部活の遠征で朝から夜までいないとのこと。


「よっ。治君」

「で、具体的に、何を手伝えば良いわけ?」

「料理。治君なら余裕でしょ?」

「はぁ、まぁね。で、一口に料理と言っても、色々あるけど、何が作りたい?」

「朝ごはんまだだからさ。お手本ついでになんか作ってよ」


朝から呼び出したの絶対このためでしょ。ちなみに、父親は夜勤から帰ってきたばっかりで爆睡中、母親にはこの事を伝えているので料理しても大丈夫とのこと。用意はいいな。無駄にだけど。


さぁて、じゃあ、軽く作るか。


「光?魚って、ある?」

「あるよ~。冷蔵庫の半冷凍のとこ」


あったあった。じゃ、ちょっくら、作りますか。


作りはじめて数分で匂いに釣られた光がキッチンに入ってきた。


「よし、あとは煮込んで完成、と」

「治君?何作ってるの?」

「内緒。さすがに炊飯くらいはできるでしょ?」

「うん。やろうか?」

「お願い」


光が炊飯している傍らで、味噌汁用の出汁を取る。


1時間後


「はい。完成」

「さすがにこれは出来ないよ。なんと豪勢な朝食なんだろう」


横で光は感激してるけど、本気(本気とは言っていない。必要最低限だ)を出せば、僕だってこんなものだ。正直、家庭科の実習くらいなら一人でこなせる自信はある。


「すごいわね。ここまでをほぼ平行して行うのは主婦でも厳しいんじゃないかしら」

「ありがとうございます」


光が爆睡中の父親も起こしてきて、そのまま火賀美家の食卓にお邪魔させてもらった。

ちなみに、料理も絶賛してくれて非常に嬉しかった。

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