第5話 水泳と幼馴染

「治斗~?9時前だけど、水泳大丈夫なの~?」


……すっかり忘れてた。といっても、どうせ準備は出来ている。


「行ってくる」

「うん。いってらっしゃい。じゃあ、そろそろ母さん起こして私も準備するか~」


とりあえず、学校までは間に合うだろう。着いたら、割りと楽なので急ぐ理由は遅刻したくないというただの意地である。


水泳と一口に言っても学校主催の自由なプール遊びである。中学にしては珍しいだろうか。

どうせ数時間だけのお遊びだ。


水が荒れてたり、いたずらされたり(いたずらしたのはただの知らない人だった。怒られてた)とハプニングらしいハプニングは特にない平和な数時間を過ごし、帰路に就いた。



と、その時、不意に背中を撫でられる感覚がした。


「な、何……?」

「まぁまぁ、そう怒らないでさ。なんでまた独りでいるのかだけ知りたい」

「……君には関係ない話だ」

「関係大あり。私はね、君が独りでいることが幼馴染として気にくわない」

「だったらなんだ。君は感情が乏しくて人の気持ちも汲み取れない僕にそういう気持ちを汲み取れ、と?」

「よくわかってんじゃん。だからこそ、今こそ克服する時でしょ?君が独りになりたがる理由なんて一つしかないでしょうに」

「分かってるなら良いじゃないか。甚だ迷惑」

「それでも」

「………面倒だな」

「そんなこと言える立場じゃないよね?」


………ただただ面倒くさい。久々に心からお節介が嫌いになりそう。幼馴染だからってなんだよ。世話焼きは姉さんもだけど、焼かれている側からしたらただただ面倒なのである。

そう心から思う今の僕だった。

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