第2話 道案内

そういえば俺に魔法の才能ってあるのかな?

魔法が使えるのが一番異世界って感じするよな。使いて〜

そうこうしているうちに街にたどり着いたはいいものの、どうしようか…身につけている衣服のポケットには何も入っていないし…

市役所みたいな場所、どっかにないかな。

「すみません」「はい?なんでしょうか」

ひとまず俺は、近くを通りかかった男の人に聞いてみることにした。

「この街に市役所ってありますか?」

「シヤク、ショ?ごめんなさい、ちょっとよく分からないです」


…一か八か言ってみるか。

「あー、じゃあ『ギルド』!冒険者ギルドってありますか?」

「あ、冒険をされているんですね。ギルド?とは呼ばれてないんですけど、冒険者の滞在の手続きとかハンター登録とか、諸々のことができる場所ならありますよ」


「そうなんですね。ちなみにその場所にはどうやって行けばいいですかね?」

「ちょうど僕もそこに向かうところだったんで、よかったら一緒に行きます?」


親切な男の人により、さっそく俺の異世界ライフが動き始めた…


「その場所って、なんていう名前の施設なんですか?」

「ラムール役場です。ラムールっていうのはこの街の名前です」

市役所じゃなくて役場か…ほぼ同じじゃん。


「ちなみになんですけど、僕に魔法が使えるかどうかをその役場で調べられますかね?」

「あー、魔法適性診断っていうのがあるんで、頼めばできると思いますよ」

魔法適性診断。随分とお遊び診断みたいな名前だな。トレンド入りするタイプの。


「着きましたよ。ここが役場です」

「おー…おしゃれな建物ですねぇ…」

外観は古代ローマの宮殿のようだが、内装は美術館のようにきらびやかで…

ぶっちゃけ、もっと狭くてボロボロで、むさ苦しい男ばかりな場所かと思っていたけど、細身で小綺麗にしている人が多いみたいだな。


「分からないと思うんで、冒険者登録ができる窓口まで案内します」

「何から何まですみません…」

異世界は治安が悪い場所かと思っていたが、彼のように優しい人がいるらしい…


「ここです。登録にはお金も道具もいりません。窓口の人の言う通りにすれば大丈夫です。では、僕はこれで」

「あの、もしよかったらお名前だけでも教えてもらえませんか?ここまで親切にしてもらって、このままお別れっていうのもあれですし…」

「僕はセバスチャンです。あなたは?」

「チヒロです。チヒロ・ナトリ」

なんとなく欧米っぽく名前を入れ替えてみた。こんな世界観だし入れ替えるべきだろ。

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