転生したけどこれといった才能がなかった件

サムライ・ビジョン

第1話 恒例の…

「…!いってぇ…」

体中に走る激痛、どこからともなく流れてくる血液。間違いない。俺はまさにたった今、トラックにぶち当たったのだ。


「キャー!」「救急車はまだ来ないのか!」「ママー」「見ちゃダメよ!」


かねてより異世界ものには目がなくて、転生できるものなら是非ともしてみたかった。

しかし今、全身で感じているのは容赦のない激痛と、信号をよく見なかった後悔のみ…


(ああ…なんか目の前が暗くなってきた…痛みもだんだん薄れて…死ぬのか?)




「ねぇねぇ、お試しで転生してみない?」

「…え!?誰ですか…?」

まるで眠っているかのような安らぎ。真っ暗な視界の中で、若い女のものと思われる明るい声が響きわたる。

「誰だっていいでしょー それより、転生したいの?したくないの?」

「転生って、あれですか?剣とか魔法とか…いや、そんな都合よく転生できませんよね」

「それができちゃうんだよなー 現代の中高生を魅了してやまない… あの!異世界に!転生できちゃうんです!」


なんと…!あの異世界ですと!?


「本当ですか!?」

「その代わり、どんな種族で、年齢はいくつで、どんな能力を持って転生するのかは運次第だけどね」

「運次第ですか…いや、大丈夫です。やっぱり転生したいです!」


たとえ運次第だろうと、チャンスがあるのなら逃すという手はない。異世界ものを世界一愛する俺の熱意…ナメてもらっちゃ困るぜ。


「そうかそうか!さすがは異世界大好きくん!そんじゃ転生するということで、しばしのお時間を〜」


そう言ったきり、声の主はどこかに消えてしまったようだ。

真っ暗なこの空間に静寂が訪れた途端、そこはかとない眠気に襲われた。

(これ、寝て起きたら転生してるパターンじゃね?だとしたら胸熱だなぁ…)




「…んん…あれ?…あれ!?」

気がつくと俺は、少し薄汚れた白い服を着て草原に寝転がっていた。

立ち上がって辺りを見渡すと、少し離れたところに街並みが見えた。とりあえず街に行ってみるか!やべぇ興奮してきた!

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