第5話 やばい先輩の話
山見明は、先輩らしき人物が言った方向に向かっていくと、ちょっとだけ古ぼけた校舎から突然、綺麗な埃一つ落ちていない床へと変貌した。いや、床だけではない。天井も、壁も、ガラスまで違う。今いる場所と一歩踏み出した世界は全く違う。まるで、別世界だ。
こんな綺麗なところは見たことがない。自分みたいな汚き人間が、この聖域に入って良いのだろうか?
小説や漫画の中でしか見たことのない装飾に、虫一匹、埃一つ入るのを躊躇しそうな清潔感!過去にベルサイユ宮殿を写真で見たことがある。その写真をもっと豪華にし、原寸大まで大きくして、ここに召喚されたみたいだ。
「スゴイ!」
思わず口から言葉が漏れてきた。
僕は行かなければならない。勇気を持って。例え何があったとしても第一印象は悪くしてはならない。特に今から学校の最高権力者、校長先生に会いに行くんだ。
勇気を出して、一歩、二歩、三歩と踏み出していく。すると余裕のある笑みととも、あの、先輩らしき人物がドアを開けて入っていった。
え?嘘でしょ?ねぇ!自分はあれだけ勇気を振り絞ったのに対し、先輩らしき人物は余裕で!ななな何て素晴らしんだ。顔も、後輩に対する態度も。その度胸も。尊敬にあたします。お姉ちゃんは失敗作みたいだけど、この人みたいな模範的な人の方が多いはずだ。
自分もこの人みたいになれるように頑張らなくてはいけないな。
このようなことを考えながら一歩、二歩、三歩、と進んでいく。やっと校長室の前まで来た。彼は深呼吸をして校長室へと続く扉を押す。
そこの景色は現実とは思えなかった。廊下もすごいがここもすごい。床は大理石で覆われ、全てに装飾が施されている。
綺麗に磨かれている。毎日毎日、掃除を隅から隅までやっているのだろう。白い天井にも装飾が施され、大きなシャンデリアが付いている。
横には本棚があり、題名だけで頭が警告を出すような難しい内容の本が丁寧に、綺麗に置かれている。正面には書斎がある。机の上には何も無く、整理されているようだった。
「そこにあるソファーに座って下さい。」
指示は唐突にきた。
はい、と返事をして明は座った。正面にはソファーがもう一つある。
黒い革で作られているようだ。今、私が座っているのと同じものだろう。座り心地がいい。ふわふわで、硬くもなく、柔らかくもない。丁度いい。
「君が山見アキラくんですね。」
「はい。そうです。」
山見アキラって言ったよね。君って呼んだよね。僕は今、男の子扱いをされてたよね!
「貴方は選ばれました。」
若々しくみずみずしい声が聞こえた。
ツッコミたいことは山ほどある。
「何のことかわからない顔をしてますね?まぁ、無理もありません。今、オルケット学園は人権問題にかなり力を注いでいます。日本という国は、先進国の中では人権問題があまり解決されてないのです。特にトランスジェンダー、レズ、バイセクシャル、ゲイ、などLGBTにはかなり疎いです。そこで私は貴方をこの学校にむかえ入れようと思いました。」
人権問題は大切だと思うけど、どうして自分のを雇用しようと思ったのだろうか?それよりもっと重大なことがある。
「どうして、僕の制服はセーラー服なのですか?」
即答で答えは帰ってきた。
「可愛いからです」
頰を赤らめながら言っていた。
何だろうこの人、とっても頭にくる。
そう思って顔をよく見てみるとさっきの先輩らしき人物の顔がそこにはあった。
「これはさっきここの場所を教えてくださった優しい人ではないですか?どうしてここにいるのでしょうか?」
これも即答。
「ここの副校長は私だからです。」
笑いながら言っていた。
冗談だよね。
そう言いながら、引きつった表情で、彼は校長らしき人物の話を聞いていた。
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