第19話サエちゃんの課題
「サエちゃんサエちゃんサエちゃん!」
配達バッグの中に消えたサエちゃんを助けるために、慌てて配達バッグに手をつっこんだ。
えーと、サエちゃんは……これだ!
サエちゃんを認識すれば、あとはいつものようにそのまま引っ張りあげるだけ。
重さも感じず、スポーンと飛び出してきた。
サエちゃんはキョトンとした表情で自分になにが起きたかよく分かっていないらしい。
「どこまで覚えてる?」
「ええと、そのバッグに向かってとりゃー!! って飛び込んだところまで。なのに、気がついたらいつのまにかたーくんに手を繋がれてここに立ってた」
「あんまり心配かけさせないでよサエちゃん。サエちゃんは配達バッグに吸い込まれるように消えたんだぞ。心配したんだからな」
「そっかー。心配してくれたんだ。えへへへへー」
なぜ、そこで照れるのだ。
「じゃあ、配達バッグの中にいる時のことは全然覚えてないんだな?」
「うん。なんにも覚えてないよ」
「体に異常は?」
「うーん……大丈夫……だと思う。たーくん、確かめてみる?」
「やめとく」
「ちぇー」
ぷっぷのぷーとほっぺたを膨らませて怒ったふりをする。ていうか、サエちゃんもド◯ミ見てたんだったな。
さて、どうしようか。
とりあえず人間も配達できることは分かった。この感じなら異世界に転移したとしても多分大丈夫だろうとは思う。
人手が欲しかったのは本当だし、サエちゃんは仕事に関してはマジメで信頼できるからぶっちゃけ来てくれたら助かるんだけど、大きな問題がひとつあるんだよね。
「確認だけど、サエちゃん。異世界に行ってオレの仕事の手伝いしてくれる気はあるんだよね?」
「うん、もちろん! ようやく連れて行ってくれる気になったんだねー。あたしゃー嬉しいぞたーくん」
「オレも、サエちゃんが来てくれたら嬉しい。だけど、問題がある」
「どんな困難な障害も、2人でなら乗り越えられるよ」
「それは分からないけど。サエちゃん、向こうの言葉、分からないだろ」
「あ」
固まった。
水の四天王の最後の呪いから仲間を助けるために石化したあの双子のごとく。
いやー、オレは指輪のおかげで言語には困らずにすんで本当によかった。
「だから、もし来るなら言葉の勉強をする必要があるぞ。幸い、あっちで教えてくれる人に心当たりはある。働いたあと数時間勉強……できる? サエちゃん」
「う……が、がんばりますです」
オレの質問にたっぷり20秒は考えたあと、そんな言葉を絞り出したのでした。
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