第15話見つかる課題

 串焼き屋のオヤジの娘さんの食レポ(オレにはよく分からなかったけど)が、集まっていた人たちのハートに火をつけたらしい。


「次は俺な! 俺はブルーハワイってやつに挑戦してみるぜ。見た目がいちばん涼しそうだからよ!」


「わたしはレモンにするわ。 白い氷に黄色い色がついて、まるで宝石みたいね」


「あたいはメロンにするかね。なんでだか分からないけど、いちばん高級そうなきがするよ」


 次々と入る注文にポーシャはキリキリ舞を踊り始めた。


 今のところなんとかギリギリのところでらこなしているけど、テンテコ舞を踊り始めたらいったん他の女の子と交代させて休憩させたほうがいいだろうか。


「大丈夫です! 最後までわたしに任せてください!」


 頼もしいポーシャのセリフだ。


 ……あれ、オレ今、口には出してなかったよな?


 ……まあ、いいか。


 売り子のポーシャも大変だけど、作るオレたちも相当に忙しい。


 なにしろ、かき氷機は1台しかないのだ。


 作るスピードが落ちれば、それだけお客さんを待たせることになって、そうなれば直接お客さんと触れているポーシャが苦情を言われることになってしまうからな。


 男の意地だとばかりに、ひたすら氷を削り続ける。


 シャリシャリシャリシャリ


 シャリシャリシャリシャリ


 シャリシャリシャリシャリ


 氷を削る人、シロップをかける人、練乳をかける&お客さんに渡す人の流れ作業を始めてからは、提供速度も多少改善している。


 それなのに、人の列は全然減らないどころか、むしろ長くなっていってるような……?


「あ、頭がー!」


「くー、歯に染みる」


 そんな声も聴こえてくる。


 頭が痛くなるのは当然いつものあれだけど、歯が痛くなるっていうのは知覚過敏か? それか虫歯?


 医学には詳しくないから分からないけど、こっちとしては頭キーン現象だけしっかり説明しておけば問題ないだろう。


 応援で駆けつけてくれた女の子たちも、食器の回収やお茶配りを必死にこなしてくれている。


 こりゃあ、ポーシャと2人だけでやろうとしてたのは見込みが甘すぎたな。


 今日の販売が終わったら、孤児院へ行って明日も応援をお願い出来ないか相談してみたほうがいいな。


 ……ただ、人数は増えても、ポーシャを含めて大半は飲食関係は未経験だ。だからどうしても目の行き届かないところやミス、無駄なんかもある。


 たとえばかき氷の量。忙しくなってくると、疲れもあって1杯あたりの量に差が出てきがちになる。それからポーシャ。彼女も頑張ってはいるけどだんだん笑顔が引き攣ってきた。

 回収、お茶担当も、テーブルの拭き残しなんかがあるぞ。ほうっておくとベトベトして落としにくくなるから、面倒でもしっかり頼む。


 うーん、やっぱり手が足りない。飲食経験で、新人バイトを任せられるような人はどこかにいないかなあ。


 そんなふうにバタバタしているうちに、氷が無くなって今日の販売は終了した。


 食べられなかった人たちから不満までたけどこればかりは仕方ない。


 配達バッグを指して、特殊な方法で氷を運んでいるからどうしても量に限界があるんですと説明したら、なんとか納得してくれて助かった。


 こっちの世界では夏に氷なんて超超超貴重品だということはみんな分かってるから、あまり無理も言えないんだろうね。


 それにしても、疲れたなー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る